観護措置とは、家庭裁判所が、少年審判を行うために必要があると判断した場合に、決定によってとる一時的な措置です(少年法17条1項)。
法律上、観護措置には、次の2種類があります。
- 家庭裁判所調査官の観護に付する措置(調査官観護)
- 少年鑑別所に送致する措置(収容観護)
実務上、「観護措置」という場合には、少年を少年鑑別所へ送致する後者の措置を指すことが一般的です。そのため、このページでも、特に断りがない限り、少年鑑別所へ送致する観護措置についてご説明します。
観護措置が決定されると、少年は一定期間、少年鑑別所に収容されます。
少年鑑別所では、面接や心理検査、生活状況の観察などを通じて少年の心身の状態や行動傾向などが確認され、その結果が家庭裁判所の判断資料となります。
どのような場合に観護措置がとられますか?
観護措置は、家庭裁判所へ送致された少年について、当然にとられるものではありません。
家庭裁判所が、調査や少年審判を行うために少年鑑別所へ収容する必要があると判断した場合に、観護措置がとられます。
具体的には、主に次のような事情が考慮されます。
- 少年が調査や少年審判に出頭しないおそれがあり、身柄を確保する必要がある
- 交友関係や家庭環境などから切り離し、少年を緊急に保護する必要がある
- 少年鑑別所において、少年の心身の状態や行動傾向などを詳しく鑑別する必要がある
これらの事情に加え、事件の内容、少年の生活状況、家庭環境、保護者の監督体制などを踏まえ、観護措置の必要性が個別に判断されます。
身柄を拘束されたまま送致された場合
逮捕・勾留された少年の身柄と事件が家庭裁判所へ送致された場合には、裁判官が少年と面接し、遅くとも少年が家庭裁判所へ到着してから24時間以内に、観護措置をとるかどうかを判断します。
観護措置が決定されると、少年は少年鑑別所へ収容されます。
一方、裁判官が少年を少年鑑別所へ収容する必要はないと判断した場合には、観護措置をとらずに少年を釈放し、在宅のまま調査を進めることになります。
在宅事件でも観護措置がとられることがあります
在宅事件では、少年が自宅で生活し、学校や仕事に通いながら家庭裁判所の調査を受けることが一般的です。
もっとも、在宅事件であっても、その後の調査によって新たな事情が判明した場合など、家庭裁判所が少年鑑別所へ収容する必要があると判断したときには、観護措置がとられることがあります。
そのため、在宅事件だから絶対に観護措置がとられないというわけではありません。
観護措置が決定されるとどうなりますか?
少年鑑別所で生活することになります
観護措置が決定されると、少年は一定期間、少年鑑別所に収容されます。
収容中は、自宅へ帰ることや、学校・勤務先へ通うことはできません。少年は、少年鑑別所で定められた日課に従って生活しながら、鑑別や家庭裁判所調査官による調査を受けます。
少年鑑別所での生活、面会や差入れなどについては、次のページで詳しくご説明しています。
少年鑑別所による鑑別が行われます
少年鑑別所では、少年の性格や心身の状態、事件に至った原因、今後必要となる指導や支援などを明らかにするため、専門的な鑑別が行われます。
法務技官(心理)は、少年との面接や心理検査などを通じて、少年の知能や性格、行動傾向、抱えている問題などを確認します。
また、法務教官は、少年の所内生活を支援しながら、日常の行動やほかの少年・職員との関わり方、課題への取組み方などを観察します。
これらの面接、心理検査、行動観察などを踏まえ、少年鑑別所は、鑑別結果を家庭裁判所へ報告します。
家庭裁判所調査官による調査も行われます
観護措置中には、少年鑑別所による鑑別とは別に、家庭裁判所調査官による調査も行われます。
家庭裁判所調査官は、少年や保護者との面接などを通じて、事件の内容、少年の生活歴や家庭環境、学校や仕事の状況、交友関係、事件後の取組みなどを確認します。
少年鑑別所の鑑別結果と家庭裁判所調査官の調査結果は、裁判官が少年にどのような処分や働きかけが必要かを判断する際の重要な資料となります。
観護措置は、単に少年を少年鑑別所へ収容するだけの期間ではありません。限られた期間の中で、少年の抱えている問題や、再非行を防ぐために必要な支援が詳しく調べられます。
少年鑑別所と少年院は異なります
少年鑑別所と少年院は、名称が似ていますが、その役割や収容される時期が異なります。
少年鑑別所は、処分を決める前に調査を行う施設です
少年鑑別所は、家庭裁判所が少年に対する処分を決める前に、少年の心身の状態や性格、行動傾向、事件に至った原因などを調べる施設です。
観護措置は、少年審判に向けた調査を行うための一時的な措置であり、少年に対する最終的な処分ではありません。
少年院は、少年審判後に矯正教育を行う施設です
少年院は、少年審判の結果、家庭裁判所が「少年院送致」という保護処分を決定した場合に、少年が収容される施設です。
少年院では、少年の特性や抱えている問題に応じて、生活指導、教科指導、職業指導などの矯正教育が行われます。
このように、少年鑑別所への収容と少年院送致は、全く異なる手続です。観護措置によって少年鑑別所へ収容されたからといって、少年院へ行くことが決まったわけではありません。
観護措置はどれくらい続きますか?
少年鑑別所に収容される期間は、法律上、原則として2週間です。
もっとも、家庭裁判所が特に継続の必要があると判断した場合には、2週間の期間を1回更新することができ、実務上は、更新されて合計約4週間となる事件がほとんどです。
また、一定の事件において、非行事実を認定するために証人尋問、鑑定、検証などの証拠調べを行う必要があり、少年を引き続き収容しなければ少年審判に著しい支障が生じるおそれがある場合には、特別に期間が更新され、最長8週間となることがあります。
家族との面会・差入れ
観護措置中でも、保護者などのご家族は、原則として少年と面会でき、必要な物品を差し入れることもできます。
ただし、面会できる日時や時間、差し入れられる物品などは、少年鑑別所ごとにルールが定められています。面会や差入れをする前に、収容先の少年鑑別所へ確認することをおすすめします。
面会や差入れの具体的な方法、注意点については、次のページで詳しくご説明しています。
家族との面会は少年の大切な支えになります
少年鑑別所では、少年は家族と離れて生活しながら、自分の行動やこれからについて考えることになります。そのような中で、家族との面会が少年の精神的な支えとなることも少なくありません。
限られた面会時間を一方的に叱るだけで終わらせるのではなく、まずは少年の話に耳を傾けた上で、「家族として一緒に考えていく」という姿勢を伝えることが大切です。
観護措置が決まった後に弁護士ができること
観護措置が決定された後でも、弁護士である付添人は、身体拘束の早期解消と少年審判に向けて、次のような活動を行います。
① 観護措置決定に対する異議申立て・取消しの働きかけ
観護措置によって少年鑑別所へ収容する必要がないと考えられる場合には、家庭裁判所に対して、観護措置決定への異議申立てを行うことができます。
異議申立てでは、保護者による監督が可能であること、学校や仕事に戻る必要があること、在宅のままでも調査や少年審判に対応できることなどを、具体的な資料とともに主張します。
また、観護措置決定後に事情が変化し、少年を収容する必要がなくなった場合には、家庭裁判所に対して観護措置を取り消すよう求めることもあります。
② 少年と面会し、今後の対応を一緒に考えます
付添人は、保護者などによる一般面会とは異なり、原則として施設職員の立会いなく少年と面会することができます。
少年から事件についての考えや現在の気持ちを聴き、家庭裁判所調査官との面談や少年審判でどのように自分の考えを伝えるかを一緒に整理します。
また、少年の思いや考えを保護者へ伝え、保護者の気持ちや今後の監督方針を少年へ伝えるなど、親子の橋渡しをします。
③ 保護者と連携して帰宅後の環境を整えます
少年が自宅へ戻った後の生活について、保護者と話し合いながら、家庭での監督方法、学校や勤務先への対応、交友関係の見直し、医療・福祉機関による支援の必要性などを整理します。
被害者がいる事件では、被害弁償や示談交渉を進めることもあります。
少年が同じことを繰り返さないための具体的な環境を整えることは、少年審判に向けた準備としても重要です。
④ 家庭裁判所調査官への対応と少年審判の準備をします
付添人は、家庭裁判所調査官と面談し、少年や家庭の状況、事件後の変化、再非行防止に向けた取組みなどを伝えます。
さらに、少年や保護者の取組みを意見書や資料として家庭裁判所へ提出し、少年審判において適切に考慮されるよう働きかけます。
観護措置中は、少年との面会、家庭環境の調整、被害者への対応、家庭裁判所への働きかけなどを、限られた期間の中で並行して進める必要があります。
観護措置が決定された後も、できることがあります
観護措置によって少年鑑別所へ収容されたからといって、お子様に対する最終的な処分が決まったわけではありません。
もっとも、収容中にも、少年鑑別所による鑑別や家庭裁判所調査官による調査が進められ、その後、少年審判が開かれます。そのため、何もせずに少年審判を待つのではなく、限られた期間の中で必要な準備を進めることが重要です。
当事務所では、現在の状況や今後の見通しをご説明した上で、身体拘束の早期解消や、家庭環境の調整、少年審判に向けた準備などを進めます。
観護措置が決定されたら、お早めにご相談ください。
観護措置から少年審判までは時間がありません。
可能な限り少年審判に向けた活動を行う必要がありますので、お早めにご相談ください。
