取調べとは、警察官や検察官が、事件について少年や保護者、事件関係者から事情を聞く手続です。
少年事件では、事件が起きた経緯や行為の内容だけでなく、その当時、少年がどのような気持ちだったのか、なぜそのような行動をとったのかなどについても詳しく質問されます。
また、事件そのものだけでなく、家庭環境、学校生活、友人関係、日頃の生活状況などについて質問されることも少なくありません。
これは、家庭裁判所が少年に対してどのような処分が適切であるかを判断するに当たり、少年の性格や生活環境、更生の可能性なども重要な判断材料となるためです。
取調べで話した内容と供述調書
取調べで少年が話した内容のうち、警察官や検察官が重要と考えた部分は、「供述調書」という書面にまとめられます。
作成された供述調書は、その後、家庭裁判所へ送られ、家庭裁判所調査官による調査や少年審判において重要な資料として利用されます。
そのため、取調べは「とりあえず話を聞かれるだけ」の手続ではありません。取調べでの受け答えは、その後の手続にも大きな影響を与えるものになります。
供述調書への署名・押印
供述調書が作成されると、少年は、その内容を確認した上で、署名・押印を求められます。
内容に誤りがあれば訂正を求めることができますし、内容に納得できない場合には、署名・押印を拒否することもできます。
もっとも、少年事件では、署名・押印を拒否したからといって安心できるわけではありません。
成人事件では、「署名・押印をしていない供述調書は証拠として使われない」といった話を耳にすることがあるかもしれません。
しかし、少年事件では、署名・押印のない書面であっても事件記録として家庭裁判所へ送られ、家庭裁判所調査官や裁判官が目にすることになります。
そのため、少年事件においては、「最後に署名・押印だけ拒否すれば大丈夫」という考え方は適切ではありません。
重要なのは、供述調書が作成される段階ではなく、その前の取調べで何を話すのかということです。
だからこそ、事件によっては黙秘権を行使した方がよい場合もありますし、逆にきちんと説明した方がよい場合もあります。
どのような対応が適切かは事件によって異なりますし、黙秘を貫くことは少年にとっては非常に難しいため、少年が取調べを受ける前に少年事件に強い弁護士へ相談することが大切です。
取調べで注意すべきポイント
警察官や検察官は取調べのプロ
取調べを担当する警察官や検察官は、日々取調べを行っているプロです。
そのため、少年自身も気付かないうちに、警察官や検察官の質問の流れに沿って話をしてしまったり、相手に迎合した供述をしてしまったりすることがあります。
もちろん、警察官や検察官は少年の味方ではありません。
「そのような言い方をすると誤解されるかもしれないよ。」
「そのようなことを言ったら不利になってしまうよ。」
など、少年に有利になるような助言をしてくれる立場ではありません。
法律上の意味と一般的な認識の違い
法律上の考え方と一般の方の認識とは、必ずしも一致しないことがあります。
例えば、「殺意」という言葉です。
一般の方は、「相手を殺そうと思った」という場合にのみ殺意があると考えることが多いでしょう。
しかし、法律上は、「相手が死ぬかもしれないと思いながら、それでも構わない」と考えて行動した場合にも、殺意が認められることがあります。
「殺意」以外にも、このような法律家と一般の方との認識の違いは少なくありません。
そのため、少年自身が、どのような表現をすると自分の本来の意図とは異なる意味に受け取られてしまうのかを理解しないまま取調べに臨むと、本来の意思とは異なる内容として受け取られてしまうおそれがあります。
黙秘権の行使
少年にも、取調べで話をしない権利である黙秘権が認められています。
既に事件について詳しく話した後で、供述調書への署名・押印だけを拒否しても、それまでに話した内容が事件の記録から消えるわけではありません。
したがって、話すべきでない事件であれば、供述調書に署名・押印する段階ではなく、そもそも黙秘権を行使する必要があります。
もっとも、「黙秘をした方がよい事件」もあれば、「事実関係を説明した方がよい事件」もあります。どのような対応が適切かは、事件の内容や証拠の状況によって大きく異なります。
そのため、「とりあえず黙秘をすればよい」、「何でも話して、最後に署名・押印だけ拒否すればよい」というものではありません。
弁護士は、事件の内容や証拠の状況、黙秘権などを踏まえながら、取調べに応じるべきか、どの範囲を話すべきか、どのような点に注意すべきかについて具体的に助言します。
取調べの回数
取調べの回数に決まりはありません。
事件の内容や捜査の進み具合によって、1回で終わることもあれば、複数回取調べを受けることもあります。
また、逮捕されている事件では身体拘束中に取調べが行われますが、在宅事件では、警察や検察から呼び出しを受け、その都度、警察署や検察庁へ出向いて取調べを受けることになります。
取調べに向けた弁護士の対応
少年にも、取調べで供述しない権利である黙秘権が認められています。
もっとも、黙秘権を行使することが常に適切とは限りません。事件によっては黙秘した方がよい場合もあれば、事実関係を説明した方がよい場合もあります。
そのため、事件の内容や証拠の状況を踏まえ、取調べで供述するのか、黙秘権を行使するのかを事前に検討することが重要です。
また、日本の現在の刑事手続では、取調べに弁護士が立ち会うことは原則として認められていません。
そのため、少年は、警察官や検察官と一人で向き合いながら、質問の意味を理解して自分の認識を正確に伝え、あるいは黙秘権を行使することになります。
さらに、取調べの途中で新たな証拠や情報を示されるなど、その場でどのように対応すべきか判断に迷う場面が生じることもあります。
少年が、弁護士の立会いがない取調べの場で、このような状況に一人で適切に対応し続けることは極めて困難です。
だからこそ、取調べを受ける前に、事件の内容や少年本人の特性を踏まえて、どのような質問が想定されるのか、取調べで供述するのか、それとも黙秘権を行使するのかについて、弁護士と十分に準備しておくことが重要です。
取調べは、一度終わってしまうとやり直しがききません。取調べでどのように対応するかを、その場になってから一人で考えるのではなく、事前に方針を整理しておくことが大切です。
また、弁護士は、取調べの場には立ち会えなくても、少年にとって自分の立場を理解し、支えてくれる存在です。
少年が「一人ではない」と感じながら取調べに臨めるよう、気持ちの面でもサポートします。
取調べを受ける前に、ご相談ください
取調べは、一度終わってしまうとやり直しがききません。
だからこそ、取調べを受ける前に、今後の見通しや注意点について一度ご相談ください。
