少年事件では、警察や検察官による捜査が終わると、原則として、事件は家庭裁判所へ送致されます。
「家庭裁判所へ送られた」と聞くと、
「もう処分が決まったのではないか。」
「少年院へ行くことが決まったのではないか。」
「裁判が始まるのではないか。」
と不安になる保護者の方も少なくありません。
しかし、家庭裁判所へ送致された時点では、少年審判を開くかどうかも、お子様にどのような処分をするかも、まだ決まっていません。
家庭裁判所では、家庭裁判所調査官による調査などを通じて、事件の内容だけでなく、お子様の性格や生活環境、保護者の監督状況、再非行防止に向けた取組みなどが確認されます。
このページでは、家庭裁判所送致の意味、送致までの流れ、事件を扱う家庭裁判所、送致された後の手続や必要な準備についてご説明します。
少年事件は原則として家庭裁判所へ送致されます
少年事件では、捜査の結果、犯罪の嫌疑があると判断された事件は、原則として、すべて家庭裁判所へ送致されます。この仕組みを「全件送致主義」といいます。
成人の刑事事件では、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、事件の内容、本人の反省、被害弁償や示談の状況、前科・前歴などを踏まえ、検察官が不起訴処分とすることがあります。
このうち、犯罪の嫌疑は認められるものの、刑事裁判にかける必要まではないと判断して不起訴とする処分を「起訴猶予」といいます。
これに対し、少年事件では、検察官が起訴猶予として捜査段階で事件を終了させることはできません。そのため、事件が比較的軽微である場合や、被害弁償・示談が成立している場合であっても、犯罪の嫌疑があると判断されれば、原則として事件は家庭裁判所へ送致されます。
家庭裁判所への送致は、捜査機関だけで事件を終了させず、家庭裁判所が事件の背景や少年の状況を調査し、更生のためにどのような働きかけが必要かを判断するための手続です。
家庭裁判所へ送致されるまでの流れ
原則として、警察から検察官を経て家庭裁判所へ送致されます
少年事件では、警察が捜査を行った後、原則として、事件は検察官へ送致されます。
送致を受けた検察官は、必要な捜査を行った上で、事件を家庭裁判所へ送致します。
そのため、少年事件の多くは、警察 → 検察官 → 家庭裁判所という流れで進みます。
在宅事件でも、逮捕・勾留されている身柄事件でも、基本的な送致の流れは同じです。ただし、身柄事件では、法律上の時間制限の中で手続が進められます。
17歳以下の一部の事件は、警察から家庭裁判所へ直接送致されます
17歳以下の少年について、司法警察員が捜査の結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があると判断した場合には、検察官を経由せず、警察から家庭裁判所へ直接送致されます(少年法41条)。
逮捕されている事件では、事件の内容や捜査の状況によって、逮捕された当日に家庭裁判所へ送致されることもあります。
もっとも、検察官を経由しない送致経路を表すものであり、必ず逮捕当日に送致されることを意味するものではありません。
なお、18歳・19歳の特定少年には、この直接送致の規定は適用されません。
どこの家庭裁判所で手続が行われるか
家庭裁判所が扱う少年の保護事件の管轄は、少年の行為地、住所、居所または現在地によって定まります(少年法5条1項)。
そのため、1つの事件について、複数の家庭裁判所に管轄が認められることがあります。
住所地と事件を起こした場所が異なる場合
例えば、横浜市で保護者と生活しているお子様が、東京都内で事件を起こして逮捕され、東京家庭裁判所へ送致された場合には、横浜家庭裁判所と東京家庭裁判所の双方に管轄が認められます。
横浜家庭裁判所には、お子様の住所や居所が横浜市にあることを理由として管轄が認められます。
一方、東京家庭裁判所には、事件の行為地や逮捕後の現在地が東京都内にあることを理由として管轄が認められます。
このように、お子様の住所地を管轄する家庭裁判所だけが、事件を取り扱えるわけではありません。
別の家庭裁判所へ移送されることがあります
事件の送致を受けた家庭裁判所は、少年の保護のため特に必要があると認める場合には、事件をほかの管轄家庭裁判所へ移送することができます(少年法5条2項)。
先ほどの例では、東京家庭裁判所へ送致された後、お子様の家庭環境や生活状況を調査し、適切な審判を行うため、横浜家庭裁判所へ事件が移送されることがあります。
もっとも、住所地の家庭裁判所への移送が自動的に行われるわけではありません。
例えば、一人暮らしをしているお子様が帰省先で事件を起こした場合には、
- 今後も一人暮らしを続けるのか
- 実家へ戻って生活するのか
- どこで学校や仕事を続けるのか
- どこで保護者による監督を受けるのか
といった事情を踏まえ、どの家庭裁判所で調査や審判を行うことが適切かが検討されます。
特定の家庭裁判所で手続を進めることを希望する場合には、家庭裁判所へ送致された後、できるだけ早い段階で、移送を求める理由や今後の生活状況を具体的に説明する必要があります。
そのため、家庭裁判所へ送致される前から、お子様が今後どこで生活し、誰がどのように監督していくのかを、ご家族で話し合っておくことが重要です。
家庭裁判所へ送致された後の流れ
事件が家庭裁判所へ送致されると、警察や検察官による捜査の段階から、家庭裁判所における調査・審判の段階へ移ります。
送致直後の手続は、少年が身体を拘束されている身柄事件と、在宅事件とで異なります。
身柄を拘束されたまま送致された場合
逮捕・勾留された少年の身柄と事件が家庭裁判所へ送致された場合には、裁判官が少年と面接し、遅くとも少年が家庭裁判所へ到着してから24時間以内に、観護措置をとるかどうかを判断します。
少年鑑別所へ送致する観護措置が決定されると、少年は少年鑑別所に収容されます。観護措置がとられなかった場合には、少年は釈放され、自宅で生活しながら家庭裁判所の調査を受けます。
在宅事件として送致された場合
在宅事件では、少年は自宅で生活し、学校や仕事に通いながら、家庭裁判所からの呼出しに応じて、家庭裁判所調査官による調査を受けます。
在宅事件について、身柄事件と同じように送致直後から24時間以内に観護措置の判断が行われるわけではありません。
もっとも、家庭裁判所が必要であると判断した場合には、在宅事件であっても、その後に観護措置がとられることがあります。
家庭裁判所調査官による調査が行われます
家庭裁判所調査官は、少年本人や保護者との面接などを通じて、事件の内容、少年の生活歴や性格、家庭環境、学校や仕事の状況、交友関係などを調査します。
家庭裁判所は、その調査結果などを踏まえ、少年審判を開始するかどうかを判断します。
少年審判を開く必要がないと判断された場合には審判不開始となり、少年審判を開くことが相当であると判断された場合には、少年審判が行われます。
家庭裁判所への送致後も、調査・審判に向けた準備が重要です
家庭裁判所へ送致された後は、裁判所からの連絡を待つだけでなく、事件の原因を考え、再び同じことを繰り返さないための準備を進めることが重要です。
形式的に反省の言葉を述べたり、保護者が「今後はしっかり監督します」と約束したりするだけでは、十分とはいえません。
なぜ事件に至ったのかを具体的に考え、お子様と保護者の方が一緒に、再非行を防ぐための現実的な環境を整えていくことが重要です。
家庭裁判所送致後に弁護士(付添人)が行う活動
家庭裁判所へ送致された後、弁護士は「付添人」として、家庭裁判所調査官による調査や少年審判に向けた活動を行います。
付添人の役割は、少年審判に出席して意見を述べることだけではありません。むしろ、お子様が事件に至った背景を明らかにし、再非行を防ぐための環境を、お子様や保護者の方と一緒に整えていくことこそが重要な役割です。
具体的には、事件の内容やお子様の状況に応じて、次のような活動を行います。
- お子様や保護者の方との面談を通じた、事件の背景や問題点の整理
- 今後の手続や見通しの説明、家庭裁判所調査官との面接に向けた準備
- 被害者の方への謝罪、被害弁償や示談交渉
- 保護者による監督体制や生活環境の整備、学校や支援機関などとの連携
- 観護措置の回避や取消しに向けた意見書の作成・提出
- 事件後の取組みを整理した意見書や資料の作成・提出
- 少年審判に向けた準備や、必要に応じた移送に関する意見の提出
付添人は、単に「反省しています」「今後は保護者が監督します」と伝えるのではなく、事件に至った原因と、それに対してどのような取組みを行っているのかを具体的に整理し、家庭裁判所へ伝えます。
家庭裁判所へ送致されたら、ご相談ください。
送致後は、家庭裁判所調査官による調査や少年審判に向けた準備が始まります。
今後の見通しや、ご家庭で取り組むべきことをご説明しますので、できるだけ早い段階でご相談ください。
