家庭裁判所へ送致されたからといって、必ず少年審判が開かれるわけではありません。

家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができないとき、または審判に付するのが相当でないと認めるときは、少年審判を開始しない旨の決定をします。これを「審判不開始」といいます。

審判不開始となると、少年審判は開かれず、保護観察や少年院送致などの保護処分も行われないまま、家庭裁判所での手続が終了します。

審判不開始となる場合

審判不開始となる場合は、大きく、審判に付することができない場合と、審判に付するのが相当でない場合に分けられます。

① 審判に付することができない場合

非行事実が認められない場合など、少年審判を開くための前提を欠く場合です。

なお、家庭裁判所の調査によって本人が20歳以上であることが判明した場合には、少年として審判を行うことはできません。

この場合には、審判不開始の決定をするのではなく、少年法19条2項に基づき、家庭裁判所から検察官へ事件が送致されます。いわゆる「逆送」と呼ばれる類型の1つです。

そのため、家庭裁判所で少年審判が開かれることはありませんが、そのまま事件が終了するわけではなく、その後は検察官が起訴するかどうかなどを判断することになります。

② 審判に付するのが相当でない場合

非行事実が認められる場合でも、家庭裁判所による調査や教育的な働きかけなどを踏まえ、少年審判を開いてさらに指導や処分を行う必要がないと判断されることがあります。

審判不開始を目指す上で実務上問題となることが多いのは、主にこの場合です。

家庭裁判所は、事件が軽いか重いかだけで判断するのではなく、少年の再非行のおそれや、保護・指導の必要性などを踏まえて判断します。

重要なのは、非行に至った原因が適切に分析され、その原因に応じた具体的な取組みが実行されているか、そして、その結果として再非行のおそれが低下しているといえるかという点です。

そのため、同じような事件であっても、非行に至った背景が異なれば、必要となる取組みや審判不開始となる見通しも異なります

審判不開始を目指すために重要なこと

審判不開始を目指す上で重要なのは、単に「反省しています」「今後は気を付けます」と伝えることではありません。

表面的な反省の言葉だけでなく、再非行防止に向けた変化が具体的な行動として現れていることが重要です。

① 非行に至った原因の整理

まずは、なぜ今回の非行に至ったのかを具体的に整理する必要があります。

交友関係、学校や仕事の状況、生活リズム、家庭での関わり、インターネットやSNSの利用状況、少年が抱えていた悩みなど、非行の背景は少年によって異なります。

少年本人や保護者が事件に至った原因を十分に理解できていなければ、その原因に応じた再非行防止策を考えることもできません

② 原因に応じた取組み

次に、整理した原因に応じて、再非行を防止するための具体的な取組みを始めます。

必要となる取組みは、事件に至った背景や少年の生活状況、家庭環境などによって異なります

そのため、一般的な対策をそのまま当てはめるのではなく、少年本人や家庭の状況に応じて、現実に実行でき、継続できる方法を考えることが重要です。

また、被害者の方がおられる事件では、被害者の方の意向に配慮しながら、謝罪や被害弁償に向けた対応を検討することもあります。

③ 取組みの実行と継続

再非行防止に向けた取組みは、計画を立てるだけでなく、実際に行動へ移す必要があります。

「これから取り組みます」という段階と、既に具体的な取組みを始め、継続している段階とでは、家庭裁判所からの評価も異なり得ます。

もっとも、家庭裁判所に評価してもらうためだけに、一時的な取組みを行えばよいわけではありません

少年本人が取組みの必要性を理解し、その後も継続できる内容にすることが大切です。

少年事件では、家庭裁判所へ送致されてから判断までの期間が決して長くありません。

そのため、できるだけ早い段階から非行の原因と向き合い、少年の状況に応じた取組みを始めることが重要です。

審判不開始を目指すための弁護士の対応

審判不開始を目指すために必要となる弁護士の活動は、非行事実を争う事件か、非行事実を認めている事件かによって異なります

① 非行事実が認められないことの主張

少年が非行事実を争っている場合には、少年本人から詳しく事情を聴き、事件記録を確認した上で、供述や証拠の内容を検討します。

その上で、少年の主張を裏付ける事情や、非行事実を認定する上で問題となる点を整理し、裁判官に対して意見書や関係資料を提出します。

少年が事実と異なる内容を認めたまま手続が進んでしまうことがないよう、捜査段階における供述内容も含めて検討することが重要です。

② 非行の原因に応じた環境調整

非行事実を認めている場合には、少年本人や保護者から詳しく事情を伺い、非行に至った原因や、再非行を防ぐために改善すべき課題を整理します。

その上で、家庭における監督体制の整備、学校や勤務先との調整、専門機関への相談、問題のある交友関係の見直しなど、少年の状況に応じた取組みを一緒に考え、実行していきます。

被害者の方がおられる事件では、被害者の方の意向に配慮しながら、謝罪や被害弁償、示談交渉を進めることもあります。

③ 取組みを調査官・裁判官へ伝える

再非行防止に向けた取組みを行っても、その内容や成果が調査官や裁判官に自動的に伝わるわけではありません

弁護士は、なぜその取組みが必要だったのか、その取組みによって少年や家庭にどのような変化が生じ、再非行のおそれがどのように低下しているのかを整理します。

その上で、家庭裁判所調査官との面談を通じて、少年や家庭の事情、事件後の変化、更生に向けた取組みなどを伝えるとともに、調査官が事件や少年本人、保護者などについてどのような点を問題として捉えているのかについても意見を交わします

そのような調査官とのやり取りも踏まえながら、少年の更生に向けてさらに必要な取組みを検討し、少年本人や保護者と一緒に進めていきます。

また、必要に応じて、裁判官に対して意見書や関係資料を提出し、少年審判を開いてさらに指導や処分を行う必要がないことを具体的に伝えていきます。

▶ 家庭裁判所調査官について

家庭裁判所調査官による調査が進み、少年審判を開くかどうかの判断が行われる段階になってからでは、準備できることが限られてしまいます

審判不開始を目指す場合には、できるだけ早い段階から、非行に至った原因を整理し、少年の状況に応じた取組みを進めることが重要です。

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