少年審判では、保護処分の一つとして「少年院送致」の決定がされることがあります。

少年院送致となると、少年は家庭を離れ、少年院で生活しながら、事件に至った原因や自分自身の問題と向き合い、社会復帰に向けた教育を受けることになります。

「少年院」という言葉から、刑務所に近い施設を想像する方もいるかもしれません。

しかし、少年院送致は刑罰ではなく、少年の改善更生と社会復帰を目的とした保護処分です。少年院では、少年一人ひとりの特性や問題に応じた矯正教育や社会復帰支援が行われます。

このページでは、少年院の種類、少年院送致が決まった後の流れ、収容期間、少年院での生活や教育、保護者との面会、仮退院までの流れなどについて説明します。

少年院とは

少年院は、主として家庭裁判所から少年院送致の保護処分を受けた少年を収容し、矯正教育や社会復帰支援を行う法務省所管の施設です。

少年を施設に収容すること自体が目的ではありません。

少年院では、少年の人権を尊重しながら、健全な心身の成長を図り、改善更生への意欲を高め、自主性や自律性などを身につけられるよう処遇が行われます。

少年院は、少年を罰するための施設ではなく、事件に至った原因と向き合い、再び事件を起こさず社会で生活するための力を身につける施設です。

少年院送致と前科

少年院送致は、刑罰ではなく保護処分です。

そのため、少年院送致となったことによって前科がつくわけではありません

もっとも、少年事件に関する記録が一切残らないという意味ではなく、その後の少年事件などで非行歴として考慮されることがあります。

少年鑑別所や刑務所との違い

少年院と混同されやすい施設として、少年鑑別所があります。

少年鑑別所は、観護措置によって少年審判前の少年を収容し、心理検査や面接、行動観察などを通じて、非行に至った原因や少年の特性などを専門的に調査する施設です。

これに対して少年院は、少年審判で少年院送致の決定を受けた後に、改善更生や社会復帰に向けた矯正教育を行う施設です。

また、少年院送致は刑罰ではないため、拘禁刑を執行する刑務所とも制度上の位置づけが異なります。

少年鑑別所少年審判に向けた調査・鑑別を行う施設
少年院少年審判後に矯正教育・社会復帰支援を行う施設
刑務所刑事裁判で言い渡された拘禁刑を執行する施設

▶ 少年鑑別所について

少年院送致が決まった後

少年審判で少年院送致の決定がされた場合、家庭裁判所がその場で具体的な収容先の少年院まで決めるわけではありません。

家庭裁判所は、第1種・第2種・第3種のうち、どの種類の少年院に送致するかを指定します。

その後、少年鑑別所の長が、少年の鑑別結果や各少年院で行われている矯正教育課程などを踏まえて、実際に少年を収容する少年院を指定します。

そのため、例えば第1種少年院への送致が決まった場合でも、どの地域のどの少年院に収容されるのかは、その後に決まることになります。

観護措置によって少年鑑別所に収容されている少年は、収容先の少年院が決まった後、少年院へ移送されます。

少年院の種類

現在、少年院には第1種から第5種までの5つの種類があります。

少年の年齢、犯罪的傾向の程度、心身の状況などによって対象が異なります。

種類対象
第1種少年院保護処分を受ける者で、心身に著しい障害がない、おおむね12歳以上23歳未満の者(第2種・第5種に該当する者を除く)
第2種少年院保護処分を受ける者で、心身に著しい障害がなく、犯罪的傾向が進んだ、おおむね16歳以上23歳未満の者
第3種少年院保護処分を受ける者で、心身に著しい障害がある、おおむね12歳以上26歳未満の者
第4種少年院少年院で拘禁刑の執行を受ける者
第5種少年院2年間の保護観察中の特定少年について、重大な遵守事項違反などにより少年院収容の決定を受けた者

通常の少年審判で「少年院送致」という保護処分を受ける場合に主に問題となるのは、第1種から第3種までの少年院です。

第4種は拘禁刑の執行を受ける者、第5種は特定少年に対する2年間の保護観察中の重大な遵守事項違反などを理由として少年院収容の決定を受けた者を対象としており、通常の少年院送致とは位置づけが異なります。

少年院の収容期間

少年院送致が心配な保護者の方にとって、どのくらいの期間少年院で生活することになるのかは、特に気になる点だと思います。

17歳以下の少年については、刑事裁判の刑期のように、少年審判で一律に収容期間が決められるわけではありません。

少年院では、少年の年齢、学習状況、非行に至った問題性、心身の状況などに応じて矯正教育課程が指定されます。

短期の矯正教育課程では標準的な期間が6か月以内とされ、それ以外の課程では2年以内とされています。

もっとも、これはあくまで矯正教育課程の標準的な期間であり、すべての少年がその期間いっぱい少年院に収容されるという意味ではありません。

少年院の収容期間は、事件の罪名だけで機械的に決まるものではなく、少年にどのような教育が必要なのか、その後どの程度改善が進んでいるのかなどによって異なります

特定少年(18歳・19歳の少年)の取扱い

18歳・19歳の「特定少年」について少年院送致の決定をする場合には、家庭裁判所が、犯した罪の重さを考慮して、3年以下の範囲で少年院に収容する期間を定めます。

17歳以下の少年とは仕組みが異なるため、注意が必要です。

少年院での生活

少年院では、規則正しい日課に従って生活します。

具体的な日課は施設や矯正教育課程によって異なりますが、起床・朝食後、午前と午後に矯正教育や運動などを行い、夕食後には自主学習や日記の記入、余暇時間などが設けられています。

少年院での日々の生活そのものも、生活習慣を整え、自律して生活する力を身につけるための教育の一部です。

一人ひとりに合わせた矯正教育

少年院に入院した少年全員が、同じ教育を受けるわけではありません。

少年院では、家庭裁判所や少年鑑別所から引き継がれた情報、本人や保護者の意向なども踏まえて、少年一人ひとりについて「個人別矯正教育計画」が作成されます。

この計画には、その少年が改善すべき問題、教育の目標、教育内容や方法などが定められ、それに基づいて矯正教育が進められます。

少年院で行われる矯正教育は、大きく次の5つに分かれます。

少年院で行われる主な矯正教育

種類内容
生活指導考え方や行動、生活態度などを見直す
職業指導就労に必要な知識や技能を身につける
教科指導義務教育や基礎学力などの学習を行う
体育指導健全な心身や生活習慣を身につける
特別活動指導行事や社会貢献活動などを通じて社会性を養う

非行の原因と向き合う生活指導

少年院での矯正教育の中でも、再非行を防止する上で特に重要なのが生活指導です。

少年が単に「悪いことをした」と反省するだけでは、再び同じ問題が生じる可能性があります。

そこで、事件に至った考え方や行動の特徴、家族関係、交友関係などを振り返り、同じ状況になったときにどのように行動すればよいのかを考えていきます。

少年の問題に応じて、被害者の視点を取り入れた教育、薬物非行防止指導、性非行防止指導、暴力防止指導、家族関係指導、交友関係指導などが行われることもあります。

少年院では、「反省しています」と言えるようになることではなく、なぜ事件に至ったのかを具体的に考え、同じことを繰り返さないための考え方や行動を身につけることが重要になります。

少年院での学習

少年院に入ると、学習する機会がなくなるわけではありません。

義務教育を修了していない少年には、学校教育の内容に準じた教科指導が行われます。

また、義務教育を修了している少年についても、学力の向上や進学に向けた学習、高等学校卒業程度認定試験の受験などが行われています。

さらに、高等学校での学習を希望する少年については、少年院在院中から通信制高校への入学や、出院後の学習継続に向けた調整が行われることもあります。

そのため、少年院送致となった場合にも、出院後の復学や進学まで見据えて学習を継続することが重要です。

職業指導と社会復帰支援

少年院では、出院後の就労に向けた職業指導も行われます。

働くための基本的な態度だけでなく、実際の就労につながる知識や技能を身につけるための指導が行われ、資格取得につながる場合もあります。

また、少年院では、就労だけでなく、進学、帰住先の確保、医療・福祉機関との連携など、出院後の生活そのものを見据えた社会復帰支援も行われます。

段階的な少年院での処遇

少年院での処遇は、少年の改善更生の状況に応じて、3級・2級・1級の3つの段階に分けられています。

入院当初は、自分自身の問題に目を向け、改善に向けた意欲を高めるための指導から始まります。

その後、問題を改善するための具体的な指導を受け、さらに出院が近づくと、社会生活へ円滑に移行するための準備を進めていきます。

少年院で生活していれば、単に時間の経過だけで自動的に出院できるというものではありません。

少年自身が教育に取り組み、改善更生がどのように進んでいるのかが重要になります。

保護者との面会

少年院に収容された後も、保護者が少年と面会することはできます。

少年院法では、面会について1か月に2回以上の機会を設けることとされています。

また、手紙についても、矯正教育に支障が生じるおそれがある場合などを除き、基本的に発受することができます。

少年の改善更生や円滑な社会復帰に役立つと認められる場合には、電話などによる通信が認められることもあります。

実際の面会日、時間、予約方法などは少年院によって異なるため、収容先の少年院へ確認する必要があります。

少年院に収容された後も、保護者との関係は少年の更生や社会復帰にとって重要です。

少年の変化を見守るだけでなく、出院後にどのような生活を送り、家庭でどのように支えていくのかを考えていくことも大切です。

少年院からの仮退院・出院

少年院から社会へ戻る方法として重要なのが「仮退院」です。

少年院での改善更生が進み、出院後の生活環境も整っている場合には、少年院長から地方更生保護委員会に仮退院の申出がされます。

地方更生保護委員会が仮退院を認めれば、少年は少年院を出て、家庭などの帰住先に戻ることになります。

仮退院した少年は、その後、保護観察を受けながら社会生活を送ります

そのため、少年院にいる間から、帰住先、復学や進学、就労、家族による支援、必要な医療や福祉など、出院後の生活環境を整えていくことが重要です。

少年院を出ること自体がゴールではなく、社会に戻った後に再び事件を起こさず生活していくことが重要です。

少年院送致を判断する際に考慮される事情

家庭裁判所は、少年審判において、非行事実だけでなく、少年の性格、家庭環境、学校生活、事件に至った背景、事件後の変化などについても調査し、少年の更生のためにどのような処分が必要なのかを検討します。

そのため、重大な事件だから必ず少年院送致になる、反対に事件が比較的軽いから少年院送致にはならない、と単純に決まるものではありません

少年が事件に至った原因、それまでの非行歴、家庭での監督が可能か、社会の中で更生するための環境が整っているかなど、さまざまな事情が考慮されます。

少年院送致が心配な場合の弁護士の対応

少年院は少年の更生を目的とした施設ですが、少年院送致となれば、一定期間、家庭や学校などから離れて生活することになります。

付添人は、少年や保護者との面談、事件記録や社会記録の確認、それまでの更生に向けた取組みなどを踏まえて、少年の現在の状況を整理します。

その上で、家庭の中で少年を監督できる体制が整っていることや、少年自身が事件に至った原因と向き合い、再非行を防ぐための取組みを進めていることなどを踏まえ、少年にとってどのような処分が適切なのかについて意見を整理します。

そして、必要に応じて、裁判官に対して意見書や関係資料を提出し、少年の現在の状況や、更生に向けた取組み、家庭での監督体制などを具体的に伝えます。

少年院送致を避けることだけが、付添人活動の目的ではありません。

少年の更生のためにどのような処分が適切なのかを検討し、その判断に必要な事情を裁判官へ適切に伝えることが、付添人の重要な役割です。

▶ 少年審判について

▶ 少年事件における弁護士の役割について

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