被害者のいる少年事件では、被害者への謝罪や被害弁償、示談への対応が重要になります。
その一方で、保護者の方としては、
「示談した方がよいのは分かるけれど、どう進めればいいのか」
「被害者に直接連絡してもよいのか」
「被害者の連絡先が分からない場合はどうすればいいのか」
「示談金はどのように決まるのか」
「示談が成立すると少年審判にどのような影響があるのか」
など、実際の進め方に悩まれることも多いと思います。
少年事件でも、被害者に生じた被害を回復し、誠実に謝罪することは重要です。
さらに、少年事件では、被害弁償や示談が成立したという結果だけでなく、少年本人が自分の行為によって生じた被害について考え、事件と向き合うことも重要です。
事件当事者間の直接の連絡が推奨されない理由
被害者の連絡先を知らない場合には、弁護士が事件の状況に応じて、警察や検察などの捜査機関を通じて、被害者が弁護士との連絡や示談交渉を希望するか確認してもらうなどの方法を検討します。
一方、被害者と元々面識がある場合など、被害者の連絡先を知っているときでも、少年本人や保護者の方から直接連絡することはおすすめできません。
謝罪のつもりで連絡した場合でも、その内容や方法によっては、被害者に精神的な負担を与えたり、供述への働きかけや圧力と受け取られたりする可能性があります。
特に捜査段階では、被害者や事件関係者への接触は、罪証隠滅のおそれをうかがわせる事情と判断され、逮捕といった身体拘束に繋がる非常に大きなリスクがあります。
既に少年が逮捕・勾留されている場合には、保護者による接触次第で少年の身体拘束の判断に影響する可能性もあります。
そのため、被害者の連絡先を知っている場合も、知らない場合も、弁護士を窓口として、被害者の意向を確認しながら謝罪や被害弁償、示談交渉を進めることが重要です。
被害弁償や示談をしたい場合には、被害者へ連絡する前に、まず弁護士へご相談ください。
示談金の考え方
示談を進めるに当たり、「示談金はいくらくらい必要なのか」と気になる保護者の方も多いと思います。
もっとも、示談金に一律の相場があるとはいいにくいです。
インターネット上では、罪名ごとの「示談金の相場」が紹介されていることもあります。しかし、同じ罪名であっても、行為の態様や被害の内容・程度、事件後の生活への影響などは事件ごとに異なります。
そのため、インターネット上に掲載されている金額をそのまま基準にして示談を進めることは適切ではありません。
実際の示談では、例えば、
- 被害額
- 治療費
- けがの程度や通院期間
- 精神的な苦痛
- 事件によって日常生活に生じた影響
- その他の損害
などを確認しながら、被害弁償の内容を検討します。
また、被害者が希望する内容は、金銭の支払だけとは限りません。
事件後の接触を避けるための対応や、学校・生活環境に関する配慮など、被害者が今後安心して生活するための条件を希望することもあります。
特に、少年が同じ学校の生徒に被害を生じさせてしまった場合など、被害者が未成年である事件では、被害者本人だけでなく、その法定代理人である親権者などの意向にも配慮しながら示談を進める必要があります。 子どもが事件の被害に遭ったことについて、親権者が強い不安や心配を抱えていることもあるためです。
弁護士は、少年の弁護人・付添人として少年側に立ちながらも、当事者同士の直接のやり取りから一歩離れた立場で、被害者の感情や不安にも配慮しつつ、金銭面だけでなく事件後の生活も踏まえて示談条件を調整していきます。
被害弁償や示談は、インターネット上の「相場」に金額を合わせればよいというものではありません。
事件ごとの被害の内容や被害者側の意向を踏まえて、適切な解決方法を検討することが重要です。
被害弁償後・示談成立後の家庭裁判所への送致
少年事件では、示談が成立したからといって、それだけで事件が終了するわけではありません。
成人の刑事事件では、被害弁償や示談によって被害が回復されたり、被害者の被害感情が和らいだりした場合には、その他の事情も踏まえて不起訴(起訴猶予)となることがあります。
これに対して少年事件では、検察官が起訴猶予として事件を終結させる仕組みではないため、捜査の結果、犯罪の嫌疑があると認められる場合には、被害弁償が完了していたり、示談が成立していたりしても、原則として事件は家庭裁判所に送致されます。
そのため、少年事件では、示談が成立した時点で対応が終わるわけではなく、その後の家庭裁判所での手続も見据えて準備を続ける必要があります。
示談・被害弁償と少年審判への影響
被害弁償によって被害の回復が図られていることや、示談によって被害者の被害感情が和らいでいることは、少年審判においても重要な事情として評価されます。
そのため、少年事件においても、被害弁償や示談に取り組むことには大きな意味があります。
もっとも、被害弁償をしたことや示談が成立したことだけで、少年の処分が決まるわけではありません。
少年事件では、少年が自分の行為によって生じた被害をどのように受け止めているのか、事件とどのように向き合っているのか、更生に向けてどのような変化が見られるのかといった点も重要になります。
そのため、被害弁償や示談についても、少年自身がその意味や理由を理解していることが重要です。
保護者が示談金を負担する場合でも、単に少年が「親が支払ってくれた」としか考えられていないのであれば、少年が事件と向き合ったことにはなりません。
被害弁償や示談は少年審判において重要な事情ですが、成立したという結果だけでなく、少年自身が被害と向き合い、その意味を理解していることも重要です。
早期に示談・被害弁償を進める重要性
示談や被害弁償は、必ずしも短期間でまとまるものではありません。
被害者側にも連絡や検討の都合があり、すぐに話合いを進められるとは限りません。また、保護者の方におかれても、示談金の準備に時間を要することもあり得るでしょう。
しかし、家庭裁判所に送致された後の手続には限られた時間しかありません。
特に、観護措置が取られた場合には、原則として4週間以内に少年審判が開かれることになりますが、少年審判までのその限られた期間の中で家庭裁判所調査官による調査も行われます。 調査官との面談は何度も行われるわけではないため、被害弁償や示談について少年がどのように考えているのかを確認してもらう機会も限られます。
そのため、観護措置が取られた場合には、保護者の方におかれては、被害弁償や示談の成立に向けて動くとともに、少年自身が被害弁償や示談の意味を考え、その考えを調査官に伝えていく必要があります。
ところが、そのために使える時間はかなり限られています。
また、観護措置が取られず在宅で手続が進む場合には、観護措置が取られた場合のような少年審判までの時間制限はありませんが、調査官との面談が何度も行われるわけではありません。 示談や被害弁償への対応が遅くなると、少年自身の考えについて調査官に十分に確認してもらう機会を確保できないことがあります。
被害弁償や示談には時間を要しますが、家庭裁判所で少年の考えを確認してもらえる機会には限りがあります。できるだけ早い段階から対応を始めることが重要です。
少年事件の示談・被害弁償についてご相談ください
「示談を進めたいけれど、どうすればよいのか分からない」という方は、まずはご相談ください。
謝罪・被害弁償・示談交渉への対応と、少年本人が事件と向き合うための取組みを進めます。
