「子どものSNS投稿について、プロバイダから発信者情報開示に関する意見照会書が届いた」

「子どもの投稿について、被害者から警察への相談や刑事告訴を検討していると言われた」

「被害者の方に謝罪したいが、どのように対応すればよいのか分からない」

このようなことで不安に感じている保護者の方も多いと思います。

少年本人としては軽い気持ちで投稿したつもりであっても、投稿の内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪が問題となることがあります。

また、匿名で投稿しても、発信者情報開示によって投稿者が特定され、その後、刑事告訴されることがあります

以下では、少年による誹謗中傷で問題となる犯罪、発信者情報開示、被害者への謝罪や示談、学校への対応、再発防止に向けた取組みなどについて説明します。

少年事件では成人事件とは異なる対応が必要です

成人事件と少年事件では、制度や手続がそもそも異なるため、成人の刑事事件で行われる弁護活動が、そのまま少年事件にも妥当するわけではありません。

少年事件では、少年事件特有の考え方を踏まえて対応することが非常に重要です。

▶ 少年事件の流れについて

誹謗中傷では名誉毀損罪や侮辱罪などが問題となります

「誹謗中傷」という名称の犯罪があるわけではありません

SNSや動画サイトなどへの投稿によって他人を傷つけた場合には、その投稿の内容や方法によって、名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪などの犯罪が問題となることがあります。

名誉毀損罪

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。

例えば、同級生の顔写真を掲載した上で、「〇〇は万引きの常習犯だ」、「〇〇はいじめをしている」などと、その人の社会的評価を低下させるような具体的な事実をXなどに投稿した場合には、名誉毀損罪が問題となることがあります。

また、SNS上で話題になっている芸能人やインフルエンサーなどについて、事実であるかを十分に確認しないまま、他の投稿に便乗して具体的な噂や情報を投稿した場合にも、その内容によっては名誉毀損罪が問題となります。

ここで注意が必要なのは、投稿した内容が本当のことであれば、名誉毀損罪が成立しないというわけではないことです。

社会的に取り上げる必要性がある事柄について、公益を図る目的で投稿し、その内容が真実であることが証明された場合などには処罰されないことがありますが、単に『本当のことだから書いても問題ない』というわけではありません。

侮辱罪

具体的な事実を示さずに、公然と他人を侮辱した場合には、侮辱罪が問題となることがあります。

名誉毀損罪が、社会的評価を低下させるような具体的な事実を示した場合に問題となるのに対し、侮辱罪は、具体的な事実を示さずに相手を侮辱した場合に問題となる犯罪です。

例えば、SNS上で同級生について「ブス」「キモい」などと投稿したり、YouTubeやTikTokなどのコメント欄で、動画の投稿者などに対して侮辱的な言葉を書き込んだりした場合には、侮辱罪が問題となることがあります。

また、SNS上で特定の人物に対する批判が集中している状況で、「みんなが書いているから」と軽い気持ちで誹謗中傷に加わった場合でも、自分自身が行った投稿について責任が問題となることがあります。

投稿の内容によって問題となる犯罪は異なります

SNS上の誹謗中傷では、投稿の内容や表現の仕方によって、問題となる犯罪は異なります

具体的な事実を示して相手の社会的評価を低下させる投稿であれば名誉毀損罪、具体的な事実を示さずに相手を侮辱する投稿であれば侮辱罪が問題となります。

また、「殺す」「家に行くぞ」など、相手に危害を加えることを告げる内容であれば、脅迫罪など別の犯罪が問題となることもあります。

そのため、少年による誹謗中傷では、実際にどのような内容を、どのような方法で投稿したのかを確認した上で、どの犯罪が問題となるのかを整理する必要があります。

匿名で投稿していても発信者情報開示によって特定されることがあります

少年は、匿名のアカウントであれば自分が投稿したことは分からないだろうと軽く考えて、誹謗中傷の投稿をすることがあります。

しかし、匿名のアカウントから投稿していたとしても、発信者情報開示によって投稿者が特定されることがあります。

その後、投稿者を特定した被害者が刑事告訴を行い、少年事件として捜査の対象となることもあります

なお、インターネット回線の契約者が保護者になっている場合には、プロバイダなどから発信者情報の開示について意見を求める書面が保護者に届くことになります。その書面をきっかけとして、保護者の方が、お子様が誹謗中傷の投稿をしていたことを初めて知ることもあります。

刑事事件への発展を避けるためには早い段階での対応が重要です

被害者が発信者情報開示などによって投稿者を特定した時点では、警察への相談や刑事告訴をするかどうかを検討していることがあります。

そのような中で、投稿者側が被害者への対応を誤ると、被害者の感情をさらに悪化させ、刑事告訴につながることもあります。

そのため、投稿者が特定された段階では、問題となった投稿の内容や経緯を確認した上で、できるだけ早く被害者への謝罪や被害弁償、示談に向けた対応を検討することが重要です。

適切な対応を進めることで、被害者が刑事告訴に至らず、刑事事件への発展を避けられる場合もあります。

事件化した後は示談だけでなく、被害への理解も重要です

既に警察が事件を把握し、少年事件として捜査が進められている場合であっても、被害者への謝罪や被害弁償、示談を進めることは重要です。

もっとも、少年事件では、犯罪の嫌疑がある事件は原則として家庭裁判所に送致されることになっています。

そのため、被害者との間で示談が成立したり、被害者が告訴を取り消したりしたとしても、それだけで少年事件としての手続が終了するとは限りません

家庭裁判所では、被害弁償や示談が成立しているかという結果だけでなく、少年本人が自分の行為によって被害者にどのような影響を与えたのかを理解し、事件についてどのように考えているのかという点も重要になります。

SNS上に投稿された内容は、他の利用者に転載されたり、スクリーンショットとして保存されたりすることで、投稿を削除した後も残ることがあります。

特に、被害者が同じ学校の生徒である場合には、投稿内容が同級生などの間に広まり、被害者の学校生活や人間関係にも影響を与えていることがあります。

そのため、少年本人には、単に「悪口を書いてしまった」と考えるのではなく、自分の投稿がどのように広がり、被害者にどのような影響を与えたのかを具体的に考えてもらうことが重要です。

当事務所では、被害者側の意向に配慮しながら謝罪や示談に向けた対応を進めるとともに、少年本人にも、自分の投稿によって生じた被害について考えてもらい、家庭裁判所での手続も見据えて事件と向き合うための取組みを進めていきます。

誹謗中傷によって学校への対応が必要になることがあります

少年がSNSなどで誹謗中傷の投稿をしたことをきっかけとして、少年本人や在籍している学校がインターネット上で特定されることがあります。

その結果、学校に対して、少年の投稿について通報や問い合わせなどがされ、学校が問題を把握することもあります。

学校が問題を把握した場合には、投稿の内容や被害の状況、学校に与えた影響などを踏まえて指導が行われ、学校によっては停学・退学などの処分が検討されることもあります。

また、少年本人の反省や被害者への対応、再発防止に向けた取組みなどについても説明し、その後の学校生活について学校側と話し合うことになります。

当事務所では、投稿の内容や学校側の対応を確認した上で、少年・保護者の方のご意向にできる限り沿えるよう、保護者の方とともに学校への対応を検討していきます。

▶ 少年事件における退学・停学について

誹謗中傷に至った原因を振り返り、再発防止に取り組むことが重要です

少年による誹謗中傷では、少年本人がなぜそのような投稿をしたのかを振り返り、同じようなことを繰り返さないための取組みを進めることが重要です。

例えば、被害者とのトラブルに対する仕返しとして投稿したのか、友人同士の悪ふざけの延長だったのか、周囲から面白がられることを期待して投稿したのか、匿名であれば何を書いても問題にならないと考えていたのかなど、投稿に至った背景は事件によって異なります。

また、再発防止を考える上では、被害者の立場に立って考えることも重要です。

自分自身や、自分にとって大切な家族や友人が同じような誹謗中傷を受けたとしたら、どのような気持ちになるのかを考えてもらい、自分がした投稿によって被害者がどのような思いをしたのかを理解してもらう必要があります。

このような振り返りを通じて、単に「もう悪口を書きません」「もうSNSで同じことはしません」と約束するだけではなく、なぜ誹謗中傷をしてはいけないのかを少年本人自身が理解することが、同じことを繰り返さないために重要です。

また、友人同士で一緒になって特定の人物を誹謗中傷していた場合には、少年本人の交友関係や、集団の中でどのような立場にあり、なぜその行為に加わったのかについても振り返る必要があります。

保護者の方にも、少年本人のSNSの利用状況や交友関係などを踏まえ、同じような問題を繰り返さないために、どのような見守りや環境づくりが必要なのかを考えてもらうことが重要です。

家庭裁判所に送致された場合には、このような原因の振り返りや被害者の立場に立った理解、再発防止に向けた取組みは、少年本人の更生や再非行防止を考える上でも重要になります。

当事務所では、少年本人と投稿に至った経緯を振り返り、被害者の立場に立って自分の行為を考えてもらうとともに、保護者の方とも話合いを重ねながら、その少年に応じた再発防止の方法を一緒に検討していきます。

少年の誹謗中傷では問題が大きくなる前からの対応が重要です

少年による誹謗中傷では、警察から連絡を受けて初めて問題が発覚する場合だけでなく、発信者情報開示に関する書面が届いたり、被害者や学校から連絡を受けたりした段階で、保護者の方がお子様による投稿を知ることもあります。

まだ警察が事件を把握していない段階であれば、被害者への対応を早期に進めることで、刑事事件への発展を避けられる場合があります。

既に少年事件として捜査が進められている場合にも、被害者への謝罪や示談だけでなく、少年本人が事件と向き合い、誹謗中傷に至った原因を振り返って再発防止に取り組むことが重要です。

また、投稿をきっかけとして少年本人や学校が特定された場合には、学校への対応が必要になることもあります。

お子様による誹謗中傷が問題となった場合には、警察から連絡が来る前の段階からできる対応がありますので、できるだけ早い段階でご相談ください。

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