お子様が少年事件の当事者になると、
「逆送とは何なのか」
「うちの子の事件も逆送される可能性があるのか」
「逆送を避けるためにできることはあるのか」
と不安に感じる保護者の方も多いと思います。
少年事件では、すべての事件が家庭裁判所の保護処分で終わるわけではありません。
事件によっては、家庭裁判所から検察官に事件が送致され、刑事手続に移ることがあります。
このような手続を、一般に「逆送」といいます。
逆送が問題となる事件では、家庭裁判所が判断する前から、少年本人の更生に向けた取組みや生活環境の調整などを進めることが重要です。
以下では、逆送とは何か、どのような事件が逆送の対象となるのか、逆送を避けるために弁護士がどのような対応を行うのかについて説明します。
逆送とは
少年事件では、警察や検察官による捜査が行われた後、原則として事件は家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所では、事件の内容だけでなく、少年本人の性格や生活状況、家庭環境などについて調査し、少年にどのような処分をすることが適切かを判断します。
しかし、事件によっては、家庭裁判所から検察官に事件が送致される場合があります。
この家庭裁判所から検察官への送致を、一般に「逆送」と呼びます。
逆送には、家庭裁判所が刑事処分を受けさせることが相当であると判断して行うもののほか、本人が20歳以上となったことを理由として行われるものがあります。
「検察官から家庭裁判所に送致された事件が、家庭裁判所から検察官に逆に送致される」ことから、逆送と呼ばれています。
逆送されると、事件は家庭裁判所での少年審判手続から離れ、刑事手続へ進むことになります。
逆送される事件
家庭裁判所から検察官に事件が送致される場合には、本人が20歳以上となったことを理由とする場合と、事件の内容などから刑事処分を受けさせることが相当であると判断される場合があります。
① 20歳になった場合の検察官送致
家庭裁判所が少年事件として扱うことができるのは、20歳未満の少年についてです。
そのため、家庭裁判所の調査や審判が行われている間に本人が20歳になった場合など、家庭裁判所が本人が20歳以上であることを確認したときは、事件が検察官に送致されます。
これを、一般に「年齢超過による検察官送致」といいます。
この場合の検察官送致は、これまで説明した逆送のように、家庭裁判所が事件の罪質や情状などから刑事処分が相当であると判断して行うものではありません。
本人が20歳以上となり、少年法上の「少年」ではなくなったため、家庭裁判所が少年保護事件として処分することができなくなったことによるものです。
② 原則として逆送される事件
犯行時に16歳以上の少年が、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件については、原則として検察官に送致されます。
例えば、以下の犯罪です。
・殺人罪
・傷害致死罪
・強盗致死罪
このような事件では、検察官に事件を送致することが法律上の原則となっています。
もっとも、原則逆送の対象となる事件であっても、必ず逆送されるわけではありません。
家庭裁判所が、調査の結果、刑事処分以外の措置が相当であると認めた場合には、逆送しないこともできます。
③ 家庭裁判所の判断によって逆送される事件
②の原則逆送の対象となる事件でなくても、拘禁刑以上の刑に当たる罪の事件について、家庭裁判所が、調査の結果、その罪質や情状に照らして刑事処分が相当であると判断した場合には、事件が検察官に送致されます。
この逆送には、②のような「犯行時16歳以上」という年齢要件はありません。
そのため、14歳以上16歳未満の少年についても、事件によっては逆送されることがあります。つまり、原則逆送の対象となる事件でなければ逆送されない、あるいは16歳未満であれば逆送されないというわけではありません。
④ 特定少年の逆送
18歳・19歳の少年は、少年法上、「特定少年」とされています。
特定少年については、17歳以下の少年とは異なる逆送のルールが設けられています。
まず、特定少年については、家庭裁判所が、調査の結果、その罪質や情状に照らして刑事処分が相当であると判断した場合には、事件が検察官に送致されます。少年法62条1項は、この場合、家庭裁判所は事件を検察官に送致しなければならないと定めています。
17歳以下の少年については、拘禁刑以上の刑に当たる罪でなければ、このような逆送の対象となりません。
これに対し、特定少年については、このような犯罪の種類による制限がありません。
さらに、特定少年については、原則として逆送される事件の範囲も17歳以下の少年より広く定められています。
特定少年のときに、死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯した場合には、原則として検察官に送致されます。
例えば、以下の犯罪は、被害者が死亡していない事件であっても、原則逆送の対象となる場合があります。
・強盗罪
・不同意性交等罪
・現住建造物等放火罪
そのため、18歳・19歳の少年事件では、その事件が原則逆送の対象となる事件なのかだけでなく、事件の罪質や情状から刑事処分が相当と判断される可能性があるのかについても検討することが重要です。
もっとも、原則逆送の対象となる事件であっても、必ず逆送されるわけではありません。
家庭裁判所が、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置が相当であると認めた場合には、逆送しないこともできます。
逆送された後の流れ
家庭裁判所から検察官に事件が送致されると、その後は刑事手続に進むことになります。
もっとも、年齢超過による検察官送致の場合と、刑事処分が相当であるとして逆送された場合とでは、検察官送致後の取扱いが異なります。
年齢超過による検察官送致の場合
家庭裁判所の手続中に本人が20歳以上となったことを理由に検察官へ送致された場合には、その後は成人の刑事事件として手続が進められます。
この場合には、検察官に原則として起訴することを求める少年法上の規定は適用されません。
そのため、犯罪の嫌疑が十分にある場合であっても、事件の内容や情状、本人の状況などによっては、起訴猶予となることがあります。
刑事処分が相当であるとして逆送された場合
家庭裁判所が刑事処分を相当と認めて検察官に送致した事件については、検察官が必要な捜査を行います。
そして、捜査の結果、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がある場合には、原則として起訴されます。
成人の刑事事件では、犯罪の嫌疑が十分にある場合でも、事件の内容や情状などを考慮して起訴猶予となることがあります。
これに対し、刑事処分が相当であるとして逆送された事件では、法律上、起訴することが原則とされている点に大きな違いがあります。
もっとも、逆送後に新たな事情が判明した場合などには、例外的に起訴されないこともあります。
そのため、逆送を避けることが難しい事件では、家庭裁判所での対応だけでなく、逆送後の刑事手続まで見据えて早い段階から準備を進めることが重要です。
逆送を避けるための弁護士の対応
逆送が問題となる事件では、家庭裁判所が判断する前から対応を進めることが重要です。
もっとも、刑事処分を受けさせることが相当であるとして逆送される可能性がある事件では、どのような理由で逆送が問題となっているのかによって、重点的に行うべき対応が異なります。
原則逆送事件における対応
原則逆送事件では、検察官に事件を送致することが法律上の原則となっています。
もっとも、家庭裁判所は、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、逆送しないことができます。
そのため、弁護士としては、刑事処分以外の措置を選択することが相当である事情を具体的に示していくことになります。
家庭裁判所の判断による逆送が問題となる事件での対応
家庭裁判所が、事件の罪質や情状に照らして刑事処分が相当かどうかを判断する事件では、刑事処分ではなく、少年法上の処分によって少年の更生を図ることが相当であることを具体的に示すことが重要です。
そのため、弁護士としては、少年本人の事件に対する受け止め方や反省の状況、被害者への対応、家庭での監督体制、学校や仕事などの生活環境、再非行を防ぐための具体的な取組みなどを整理し、刑事処分以外の措置を選択することが相当である事情を家庭裁判所に示していくことになります。
重要なのは、将来の計画を立てるだけではなく、家庭裁判所が判断するまでの間に、実際にできる取組みを始めることです。
お子様の事件で逆送が心配な方へ
逆送が問題となる事件では、家庭裁判所が判断するまでに、少年本人の更生に向けた取組みや生活環境の調整をどこまで進められるかが重要です。
お子様の事件が逆送される可能性があるのではないかとご不安な場合は、お早めにご相談ください。
