お子様が少年事件の当事者になると、
「少年事件でも前科がつくのか」
「少年院に入ったら前科になるのか」
「前科がつくと就職や資格に影響するのか」
など、将来への影響を心配される保護者の方も多いと思います。
少年事件では、事件の結果によって、前科がつく場合と、前科にはならない場合があります。
少年院送致や保護観察となった場合はどうなのか、家庭裁判所から検察官に送致された場合はいつ前科がつくのか、また、前科と前歴・非行歴とはどのように違うのかについて説明します。
少年事件で前科がつく場合
少年が逮捕・勾留されても前科はつきません。また、少年鑑別所に収容されても前科はつきません。
その後、家庭裁判所で審判不開始となった場合、少年審判で不処分となった場合、保護観察や少年院送致などの保護処分となった場合にも前科はつきません。
一方で、家庭裁判所から検察官に事件が送致され(これを「逆送」といいます)、その後、刑事裁判で有罪となり、その裁判が確定した場合には、前科がつきます。
つまり、少年事件で前科がつくかどうかは、最終的に刑事裁判で有罪となり、その裁判が確定したかどうかによって決まります。
前科と前歴・非行歴
前科と前歴・非行歴は、同じものではありません。
前科は、刑事手続で有罪となり、その裁判が確定した場合に問題となるものです。
一方、少年事件では、前科がつかなかった場合でも、今回の事件について何も記録が残らないというわけではありません。
前科がつかなかったとしても、事件について「前歴」・「非行歴」と呼ばれる経歴が残ることがあります。
例えば、保護観察や少年院送致などの保護処分となった場合、前科はつきませんが、少年事件として取り扱われたという経歴は残ることになります。
このような前歴・非行歴は、20歳未満で再び非行に及んだ場合だけでなく、その後成人してから犯罪に及んだ場合にも、事件処理や量刑などを判断する際の事情の一つとして考慮されることがあります。
前科による将来への影響
前科がついた場合でも、それだけですべての進学先や就職先への道が閉ざされるわけではありません。
もっとも、一定の資格や職業については、刑を受けたことが欠格事由や登録制限などに関係する場合があります。
少年のときに犯した罪については、このような資格制限について少年法上の特別な取扱いが定められています。
少年法60条による資格制限の特則
日本では、刑事裁判で有罪判決を受けた場合、一定の資格や職業については、刑を受けたことが欠格事由や登録制限の原因となることがあります。
もっとも、少年法60条は、以下のとおり、17歳以下のときに犯した罪について刑に処せられた場合の資格制限について、特別な取扱いを定めています。
① 刑の執行を終えた後の資格制限
17歳以下のときに犯した罪について刑に処せられた場合でも、刑の執行を終えたり、刑の執行の免除を受けたりした後は、資格に関する法令の適用上、刑の言渡しを受けなかったものとして扱われます。
例えば、ある資格について「一定の刑を受けた者は、刑の執行を終えてから一定期間は資格を取得できない」と定められていたとしても、17歳以下のときに犯した罪について刑の執行を終えたり免除を受けたりした場合には、その刑を理由とする資格制限がその後も続くことはありません。
少年法60条1項
少年のとき犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終わり、又は執行の免除を受けた者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向かって刑の言渡を受けなかったものとみなす。
② 執行猶予中の資格制限
17歳以下のときに犯した罪について執行猶予付きの有罪判決を受けた場合には、執行猶予の期間中も、資格に関する法令の適用上、刑の言渡しを受けなかったものとして扱われます。
つまり、通常であれば「執行猶予中の者はこの資格を取得できない」とされる場合でも、17歳以下のときに犯した罪について執行猶予付きの判決を受けた場合には、その執行猶予中であることを理由として資格を取得できないという扱いにはなりません。
少年法60条2項
少年のとき犯した罪について刑に処せられた者で刑の執行猶予の言渡を受けた者は、その猶予期間中、刑の執行を受け終わったものとみなして、前項の規定を適用する。
③ 執行猶予が取り消された場合
もっとも、執行猶予が取り消された場合には、資格に関する法令の適用上、その取消しの時に刑の言渡しがあったものとして扱われます。
つまり、執行猶予中は資格制限について特別な取扱いを受けていたとしても、執行猶予が取り消されると、その時点から刑を受けた者として資格制限の有無が判断されることになります。
少年法60条3項
前項の場合において、刑の執行猶予の言渡を取り消されたときは、人の資格に関する法令の適用については、その取り消されたとき、刑の言渡があったものとみなす。
なお、その後に刑の執行を終えたり、刑の執行の免除を受けたりした場合には、少年法60条1項による特別な取扱いを受けることになります。
特定少年のときに犯した罪には少年法60条が適用されない
もっとも、特定少年(18歳・19歳の少年)のときに犯した罪によって刑に処せられた場合には、少年法60条の特則は適用されません(少年法67条6項)。
少年法67条6項
第六十条の規定は、特定少年のとき犯した罪により刑に処せられた者については、適用しない。
そのため、同じ少年事件であっても、17歳以下のときに犯した罪なのか、18歳・19歳の特定少年のときに犯した罪なのかによって、資格制限に関する取扱いが異なります。
したがって、少年事件で前科がついた場合の資格への影響については、犯行時の年齢、判決の内容、刑の執行状況、目指す資格や職業を踏まえて個別に確認する必要があります。
前科を避けるための弁護士の対応
少年事件で前科がつくのは、家庭裁判所から検察官に事件が送致され、その後、刑事裁判で有罪となり、その裁判が確定した場合です。
そのため、前科を避けるという観点では、逆送が問題となる事件について、家庭裁判所が判断する前の段階から対応することが重要になります。
逆送になる場面
逆送には、大きく分けて、原則として逆送される事件と、家庭裁判所の判断によって逆送される事件があります。
また、18歳・19歳の特定少年については、原則として逆送される事件の範囲が17歳以下の少年よりも広く定められています。
① 原則として逆送される事件
犯行時に16歳以上の少年が、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件については、原則として検察官に送致されます。
例えば、
- 殺人罪
- 傷害致死罪
- 強盗致死罪
などがこれに当たります。
家庭裁判所は、事件の内容や少年の状況などを考慮して、刑事処分以外の措置が相当であると認められる場合には、逆送しないこともできます。
② 家庭裁判所の判断によって逆送される事件
①の原則逆送の対象となる事件でなくても、拘禁刑以上の刑に当たる罪の事件について、その罪質や情状に照らして刑事処分が相当であると家庭裁判所が判断した場合には、検察官に事件が送致されることがあります。
つまり、原則逆送の対象となる罪を犯していなければ逆送されない、というわけではありません。
家庭裁判所では、事件の内容だけでなく、少年がこれまでどのような生活をしてきたのか、過去の非行歴、事件後の状況、更生に向けた環境なども調査した上で、刑事処分とする必要があるかが検討されます。
③ 特定少年の逆送
特定少年については、17歳以下の少年よりも、原則として逆送される事件の範囲が広く定められています。
特定少年については、①の原則逆送事件に加えて、特定少年のときに、死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯した場合にも、原則として検察官に送致されます。
例えば、
- 強盗罪
- 不同意性交等罪
- 現住建造物等放火罪
など、死亡結果が生じていない事件でも原則逆送の対象となる場合があります。
そのため、18歳・19歳の少年事件では、まず、その事件が特定少年について原則逆送の対象となる事件かどうかを確認することが重要です。
もっとも、特定少年についても、原則逆送の対象であれば必ず逆送されるわけではなく、刑事処分以外の措置が相当であると認められる場合には、逆送しない余地があります。
▶ 逆送となる事件や判断基準について
弁護士の対応
逆送を避けるための対応は、どのような理由で逆送が問題となっているのかによって重点が異なります。
原則逆送の対象となる事件では、検察官送致が法律上の原則となっているため、例外として刑事処分以外の措置を選択することが相当である事情を具体的に示していく必要があります。
一方、家庭裁判所の判断によって逆送される可能性がある事件では、刑事処分とする必要はなく、少年法上の保護処分によって更生を図ることができることを示すことが重要になります。
そのため、弁護士は、事件の内容や少年の状況に応じて、主に以下の点について、少年本人や保護者とともに検討し、実際に更生に向けた取組みを進めていきます。
- 事件に至った原因や背景
- 事件後にどのような変化があるか
- 家庭でどのような監督体制を整えているか
- 被害者がいる場合の謝罪・被害弁償・示談
- 少年が事件をどのように受け止めているか
- 再非行を防ぐためにどのような取組みを進めているか
- 学校や仕事など今後の生活環境
そして、その内容を意見書や関係資料として家庭裁判所に提出するなどして、逆送ではなく保護処分によって少年の更生を図ることが相当であることを具体的に伝えていきます。
また、家庭裁判所調査官との面接や少年審判に向けて、少年本人や保護者と十分に打合せを行い、事件に至った原因や事件後の変化、今後どのように再非行を防いでいくのかについて、自分の言葉で説明できるよう準備することも重要です。
もっとも、事件の内容によっては、逆送を避けることが難しい場合もあります。その場合には、逆送後の刑事裁判まで見据えて、早い段階から準備を進める必要があります。
逆送が問題となる事件では、その事件がどの類型に当たるのかを確認した上で、家庭裁判所が判断する前から、少年の更生に向けた具体的な取組みを進め、その内容を適切に伝えることが重要です。
お子様の将来への影響が心配な方はご相談ください
前科がつく可能性や、今後の進学・就職への影響が心配な場合には、ご相談ください。
