お子様が逮捕された場合、保護者の方にとって、
「いつ自宅に帰ってこられるのか」
「このまま何日も警察署に拘束されるのか」
「学校に行けなくなってしまうのではないか」
という点は、特に大きなご不安の一つだと思います。
逮捕された後、さらに身体拘束を続けるための手続が「勾留」です。勾留が決定すると、原則10日間、延長された場合には最大20日間、身体拘束が続く可能性があります。
もっとも、家庭での監督体制や事件関係者との接触を防ぐ方法などを早い段階で具体的に示すことで、勾留を避けられる場合があります。
このページでは、少年事件における勾留の要件や期間、勾留が決まるまでの流れ、勾留を避けるために弁護士ができることについて詳しく説明します。
勾留とは?
勾留とは、逮捕された少年について、逃亡や証拠隠滅を防ぐため、裁判官の判断により、逮捕に引き続いて身体拘束を続ける手続です。
勾留が決定されると、原則として10日間、延長された場合には最大20日間、警察署の留置施設などで身体拘束が続く可能性があります。
長期間の身体拘束は、少年本人の心身だけでなく、学校生活や仕事、家庭生活にも大きな影響を与える可能性があります。
そのため、勾留が決まってから釈放を求めるだけでなく、勾留が決まる前に、身体拘束を続ける必要がないことを具体的に示すことが重要です。
逮捕されてから勾留が決まるまで
少年が逮捕されたからといって、その時点で勾留まで決まっているわけではありません。
逮捕後、勾留が決まるまでの手続は、次のように進みます。


警察は、原則として逮捕から48時間以内に少年の身柄を検察官へ送致します。
検察官は、少年の身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、身体拘束が始まってから72時間以内に、少年を釈放するのか、裁判官に勾留を請求するのかなどを判断します。
検察官が勾留を請求した場合でも、その時点で勾留が決まるわけではありません。
裁判官が少年本人から話を聴く「勾留質問」を行い、身体拘束を続ける必要があるかを判断します。
弁護士が勾留を避けるために働きかけることができるのは、裁判官が勾留を決定する前です。
そのため、逮捕後の早い段階から、家庭での監督体制などを整え、検察官や裁判官へ具体的に伝えることが重要になります。
少年が勾留されるための要件
少年を逮捕後も引き続き身体拘束するためには、まず、通常の刑事事件と同様に、
・罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
・勾留の理由があること
・勾留する必要性があること
が必要です。
さらに、少年事件では、これらに加えて、少年を勾留することが「やむを得ない場合」であることが必要です。
以下、それぞれの要件について説明します。
① 罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
まず、捜査資料などから、少年が犯罪をしたと疑うに足りる相当な理由があることが必要です。
単に疑いをかけられているだけではなく、供述や防犯カメラ映像、目撃者の供述などの証拠を踏まえて、犯罪の嫌疑が認められることが必要となります。
② 勾留の理由があること
次に、次のいずれかの「勾留の理由」があることが必要です。
定まった住居がないこと
少年に定まった住居がなく、生活の拠点を確認できないような場合です。
例えば、家出をして友人宅やインターネットカフェなどを転々としており、実際にどこで生活しているのか分からない場合などが考えられます。
罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること
少年を釈放した場合に、事件の証拠を隠したり、関係者と口裏を合わせたりするおそれがある場合です。
例えば、
・共犯者や事件関係者と連絡を取り、口裏を合わせるおそれがある
・被害者や目撃者に接触し、供述に影響を与えるおそれがある
・スマートフォンのデータを削除するなど、証拠を隠滅するおそれがある
といった事情が問題となります。
もっとも、共犯者や被害者がいるというだけで、直ちに罪証隠滅のおそれが認められるわけではありません。
どのような証拠が残っているのか、捜査がどこまで進んでいるのか、少年が関係者に接触する可能性があるのかなど、事件ごとの事情を踏まえて判断されます。
逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること
少年を釈放した場合に、警察や検察官からの呼出しに応じず、逃亡するおそれがある場合です。
例えば、
・家出を繰り返している
・保護者による監督が難しい
・これまで警察や検察官からの呼出しに応じなかったことがある
・事件の内容などから、逃亡する具体的なおそれがある
といった事情が問題となります。
一方で、保護者が少年を引き取り、自宅で監督できることや、今後の呼出しに確実に応じることなどを具体的に示すことは、逃亡のおそれがないことを説明する上で重要です。
③ 勾留する必要性があること
勾留の理由が認められたとしても、それだけで当然に勾留されるわけではありません。
事件の内容や捜査の進み具合、少年の生活状況、身体拘束によって少年が受ける不利益などを踏まえて、それでも身体拘束を続ける必要があるのかが判断されます。
例えば、既に重要な証拠が確保されていることや、捜査が相当程度進んでいることなどは、身体拘束を続ける必要性を考える上で重要な事情となります。
また、保護者による監督が可能であることなど、身体拘束を続けなくても逃亡や罪証隠滅を防ぐことができる事情があるかどうかも重要です。
④ 少年を勾留することが「やむを得ない場合」であること
少年事件では、通常の勾留の要件に加えて、少年を勾留することが「やむを得ない場合」であることが必要です。
少年法は、検察官が少年の勾留を請求する場合についても、裁判官が少年に勾留状を発する場合についても、「やむを得ない場合」でなければならないと定めています。
これは、成人の刑事事件にはない少年事件特有の要件です。
少年は心身ともに発達の途中にあり、長期間の身体拘束によって、学校生活や家庭生活などに大きな影響を受ける可能性があります。
そのため、少年について本当に身体拘束を続ける必要があるのか、身体拘束以外の方法で対応することができないのかという点も含めて判断されます。
勾留を避けるために弁護士ができること
勾留を避けるための弁護活動は、勾留が決まってからではなく、逮捕直後から始まります。
弁護士は、少年本人や保護者の方から事件の内容や生活状況を詳しく聴き、身体拘束を続けなくても逃亡や罪証隠滅を防ぐことができる事情を具体的に整理します。
例えば、
・誰が少年を監督するのか
・少年の外出をどのように管理するのか
・スマートフォンを誰がどのように管理するのか
・被害者や共犯者などの事件関係者との接触をどのように防ぐのか
・警察や検察官から呼出しを受けた場合に、どのように出頭を確保するのか
・身体拘束が学校生活や仕事にどのような影響を与えるのか
といった事情を確認し、事件に応じた監督体制や接触防止策を整えます。
被害者への謝罪や被害弁償、示談が必要な場合には、少年本人や保護者が直接連絡するのではなく、弁護士が窓口となって対応します。
必要に応じて、保護者の監督内容を記載した誓約書などの資料も準備します。
こうした事情や資料をもとに、弁護士は検察官や裁判官に対して、少年の身体拘束を続ける必要がないことを具体的に主張します。
① 検察官に勾留を請求しないよう求めます
警察から少年の身柄を受け取った検察官は、少年を釈放するのか、裁判官に勾留を請求するのかを判断します。
弁護士は、検察官が勾留を請求する前に、家庭での監督体制や事件関係者との接触防止策、今後の出頭確保、学校生活への影響などを具体的に説明します。
その上で、逃亡や罪証隠滅のおそれがなく、少年を身体拘束する必要がないことなどを主張し、勾留を請求せずに少年を釈放するよう求めます。
② 裁判官に勾留請求を却下するよう求めます
検察官が勾留を請求した場合でも、その時点で勾留が決まるわけではありません。
最終的に勾留するかどうかを判断するのは裁判官です。
弁護士は、裁判官が勾留を決定する前に、意見書や保護者の誓約書などを提出し、
・逃亡のおそれがないこと
・罪証隠滅のおそれがないこと
・身体拘束を続ける必要性がないこと
・少年を勾留することが「やむを得ない場合」には当たらないこと
などを具体的に主張し、勾留請求を却下して少年を釈放するよう求めます。
検察官が勾留を請求した後でも、裁判官が勾留を決定する前であれば、勾留を避けるために働きかけることができます。
勾留の期間
勾留が決定すると、検察官が勾留を請求した日から原則として10日間、身体拘束が続きます。
逮捕からの流れをまとめると、次のようになります。


検察官は、勾留期間内に必要な捜査を行います。
もっとも、10日間で捜査を終えることができず、やむを得ない事由がある場合には、検察官が裁判官に勾留期間の延長を請求することがあります。
裁判官がこれを認めた場合には、さらに最大10日間、勾留が延長される可能性があります。
そのため、逮捕から数えると、身体拘束が20日を超えて続くこともあります。
勾留が決定した後も、勾留期間の途中で釈放を求めたり、勾留の延長を避けるために働きかけたりすることができます。
少年事件に特有の勾留の取扱い
少年事件では、少年の年齢や特性に配慮して、成人の刑事事件とは異なる取扱いが定められています。
① 20歳以上の者と分離して収容されます
少年法では、少年を留置施設などに収容する場合、原則として、20歳以上の者と分離して収容することが定められています(少年法49条3項)。
そのため、少年が警察署の留置施設に収容される場合にも、20歳以上の被疑者などとは別に収容されます。
少年法49条3項
刑事施設、留置施設及び海上保安留置施設においては、少年・・・(中略)・・・を二十歳以上の者と分離して収容しなければならない。
② 罰金以下の犯罪は、警察から家庭裁判所へ直接送致されます
17歳以下の少年について、司法警察員が、捜査の結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があると判断した場合には、事件は検察官を経由せず、家庭裁判所へ直接送致されます(少年法41条)。
そのため、この場合には、検察官による通常の勾留請求の手続には進みません。
なお、18歳・19歳の「特定少年」には少年法41条が適用されないため、この取扱いはありません。
少年法41条
司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
③ 勾留に代わる観護措置がとられることがあります
少年事件では、検察官は、通常の勾留を請求する代わりに、裁判官に対して「勾留に代わる観護措置」を請求することができます(少年法43条1項)。
少年法43条1項
検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第十七条第一項の措置を請求することができる。
少年法17条1項の観護措置には、家庭裁判所調査官の観護に付する措置と、少年鑑別所に送致する措置があります。
このうち、少年鑑別所送致の措置がとられた場合には、少年は警察署の留置施設ではなく、少年鑑別所に収容された状態で捜査を受けることになります。
④ 少年鑑別所を勾留場所とすることがあります
「勾留に代わる観護措置」とは別に、通常の勾留をする場合でも、裁判官が少年鑑別所を勾留場所とすることが認められています(少年法48条2項)。
少年法48条2項
少年を勾留する場合には、少年鑑別所にこれを拘禁することができる。
したがって、少年が少年鑑別所に収容されている場合でも、「勾留に代わる観護措置」による場合と、通常の勾留の留置場所として少年鑑別所が指定されている場合とがあります。
勾留中の保護者の面会
勾留が決定した後は、接見禁止が付いていなければ、保護者の方も少年と一般面会をすることができます。ただし、面会できる曜日や時間、人数、回数などには制限があり、原則として職員が立ち会います。
接見禁止が付いている場合には、保護者であっても少年と面会できないことがあります。
もっとも、接見禁止が付いていても、弁護士は少年と立会人なく接見することができます。
そのため、保護者の方が少年と直接会えない場合でも、弁護士から保護者の方の伝言やメッセージを少年に伝えることができます。
また、保護者との面会によって罪証隠滅のおそれがないと考えられる場合などには、保護者との面会が認められるよう裁判所に働きかけることもあります。
捜査が終わると事件は家庭裁判所へ送致されます
少年事件では、原則として、捜査が終了すると事件は家庭裁判所へ送致されます。
これは、勾留されたまま家庭裁判所へ送致される場合だけではありません。勾留されずに釈放された場合や、勾留された後に途中で釈放された場合でも、その後の捜査を経て家庭裁判所へ送致されます。
そのため、勾留を避けて自宅へ帰ることができても、少年事件そのものが終了するわけではありません。
少年が身体拘束されたまま家庭裁判所へ送致された場合には、家庭裁判所が、少年を少年鑑別所に収容する「観護措置」をとるかどうかを判断します。
勾留が決まった後に弁護士ができること
勾留が決定された後でも、少年の早期釈放を目指してできることがあります。
① 勾留決定に対して準抗告を行います
裁判官がした勾留決定に対しては、準抗告を申し立て、勾留決定を取り消すよう求めることができます。
弁護士は、
・逃亡のおそれがないこと
・罪証隠滅のおそれがないこと
・身体拘束を続ける必要性がないこと
・少年を勾留することが「やむを得ない場合」には当たらないこと
を具体的に主張し、少年の釈放を求めます。
その際には、家庭での監督体制や事件関係者との接触防止策に加えて、捜査の進行状況、被害者との示談や被害弁償の状況、学校生活への影響なども踏まえて、身体拘束を続ける必要がないことを説明します。
勾留が決定された後に事情が変わった場合には、その事情も含めて早期の釈放を求めることが重要です。
② 勾留の延長を避けるよう働きかけます
勾留は原則として10日間ですが、検察官が勾留期間の延長を請求し、裁判官がこれを認めた場合には、さらに最大10日間、身体拘束が続くことがあります。
弁護士は、捜査の進行状況や、家庭での監督体制、示談・被害弁償の状況などを踏まえて、これ以上身体拘束を続ける必要がないことを検察官や裁判官に説明します。
例えば、必要な証拠の収集が進んでいる場合や、被害者との示談が成立した場合などには、罪証隠滅のおそれが低下していることなどを主張し、勾留を延長しないよう求めます。
③ 保護者との面会ができるよう働きかけます
接見禁止が付いているため保護者の方が少年と面会できない場合でも、保護者との面会が認められるよう裁判所に働きかけることができます。
接見禁止の一部解除については、弁護人に法律上の申立権が認められているわけではなく、裁判所に対して、一部解除の職権発動を促すことになります。
その際には、保護者が事件に関係していないことや、保護者との面会によって罪証隠滅のおそれが生じないことなどを具体的に説明します。
裁判所が接見禁止の一部を解除すれば、接見禁止が付いている場合でも、保護者との面会が可能になります。
④ 家庭裁判所送致後の観護措置を避けるよう働きかけます
少年が身体拘束されたまま家庭裁判所へ送致された場合には、その後、少年を少年鑑別所へ収容する「観護措置」がとられるかどうかが問題となります。
弁護士は、家庭での監督体制や少年の生活状況、学校生活への影響などを家庭裁判所に説明し、少年鑑別所へ収容せず、在宅のまま調査を受けることができるよう働きかけます。
勾留が決まる前にご相談ください
勾留を避けるためには、勾留が決まる前の早い段階から対応することが重要です。
お子様が逮捕された場合には、できるだけ早くご相談ください。
