少年審判は、少年に対して処分をすべきか、するとしてどのような処分をすべきかを判断する場になります。
少年審判の様子
少年審判は非公開
少年審判では、非行の動機・態様、被害者の方への反省の気持ちといった事件に関する内容に加え、少年の生育歴、家族関係、学校・職場での状況など、より少年や家族のプライバシーに関わる問題などについても明らかになることが少なくありません。
このように、少年や保護者などから、プライバシーに関わる事項も含め率直な発言が必要とされるので、刑事裁判と異なり、少年審判は非公開とされており、一般の人が審判を傍聴することはありません。
被害者が亡くなったり、生命に重大な危険のある傷害を負ったりしたときは、被害者や遺族の方が審判を傍聴することが認められる場合がありますが、それでも事件と関係のない一般の人が傍聴することはできません。


少年審判自体が教育の場
審判の過程そのものが少年の再非行防止に向けた教育の場であるとされています。そのため、裁判官は、少年に対し、なぜ非行に至ったのかを振り返らせたり、被害の実情や被害者の気持ちに向き合わせるなどして、自分のしたことの重大さや自分の問題点を理解させて反省を深めさせる必要があります。
もっとも、少年は、その年齢や育ってきた環境などによって、理解する力や考えていることを相手に伝える力が様々です。そのため、裁判官は、時には厳しく叱ったり、時には分かりやすく丁寧に諭したりして、少年が内省を深められるように個々の少年に応じた工夫をしています。
少年審判の流れ
少年が非行事実を認めており、かつ、付添人が選任されている場合の少年審判の基本的な流れを説明します。
01
人定質問(人違いでないかの確認)
裁判官が、少年に対し、氏名・生年月日・住所などを尋ね、これから審理する事件の当事者本人であるかどうかを確認します。
02
黙秘権告知(「答えなくてもいい」という権利を説明)
裁判官から少年に対し、黙秘権(全ての質問、または少年が答えたくないと思った質問に対して黙秘することができ、黙秘したことだけで不利になることはないこと)を説明します。
逆に、黙秘をせずに話した内容については、少年にとって有利にも不利にも取り扱われる証拠となることについても、合わせて裁判官から少年に説明されます。
03
非行事実の告知(事件の内容を少年に説明する)
裁判官が、少年に対し、審判で審理する事件の内容(非行事実)を告げます。
04
少年・付添人の意見(事件の内容に間違いがないかを確認する)
裁判官から少年に対し、裁判官が告げた事件の内容(非行事実)に間違いがないかを確認します。
具体的には、検察(警察)から裁判所に送られてきた事件の内容について、裁判官が、少年にも分かりやすくなるように内容をかみ砕きながら読み上げ、その後、少年に対し、読み上げた事実について間違いがないかを確認します。
少年への確認に続き、裁判官から付添人に対しても、同様に事件の内容について確認があります。
05
裁判官から少年・保護者に対する質問
事案やそれぞれの裁判官によって進め方の違いはありますが、基本的には、最初は事件の内容や経緯など事件そのものについて質問します。
その後、事件以降の生活はどのようなものだったか、審判が終わった後どのように生活していこうと思っているか、などについて質問します。
少年に対する質問が終わると、裁判官は、少年の保護者に対しても質問をしていきます。
主に、保護者として非行についてどのように考えているか、審判に至るまでの少年の様子やこれからの少年の生活についてどのように考えているかなどについて質問されることになります。
少年や保護者が、自分の考えをきちんと自分の言葉で答えられるように、一問一答形式の要領で進んでいくことがほとんどです。
06
付添人から少年・保護者に対する質問
付添人から少年や保護者に対して質問をしていきます。
付添人は、少年審判が始まるまでの期間中、少年の更生に向けて、少年や保護者をサポートしてきました。そのため、裁判官や調査官とは違った視点で、少年や保護者の心情や行動の変化、更生に向けた取組みを把握していることも多いです。
このように、付添人ならではの視点で、少年や保護者の事件前後の変化、更生に向けた取組みなどを、少年・保護者自身の口から説明してもらうように質問をしていきます。
07
調査官による質問
調査官からも少年や保護者に対して質問がされます。
審判が始まる前に調査官による調査が行われていますが、この調査を通じて調査官が感じたことや、調査以降の生活状況に関して質問がされます。
調査官に限った話ではありませんが、更生に向けた前向きな声掛けをしてくれる調査官もいます。
08
調査官・付添人の意見(処分について調査官・付添人が意見を述べる)
調査官と付添人それぞれから、「少年にどのような処分を行うことが適切と考えるか」という点について意見が述べられます。
09
少年の意見陳述(最後に少年自身が考え・気持ちを伝える)
裁判官から少年に対し、最後に言いたいことがあるかどうか尋ねられます。
これまでの一問一答形式のようなものではなく、自由に裁判官に伝えたいことを話すことができます。
処分が決まる前に少年が発言できる最後の機会になります。
10
決定の言渡し(最終的な処分を言い渡す)
少年の意見陳述が終わると、基本的にはそのまますぐに最終的な処分を言い渡す手続に移ります。
詳細な内容は以下で説明しますが、少年審判の最終的な判断には、主なものとして、「不処分」、「保護処分(保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致)」、「検察官送致」などがあります。
あまり多くないですが、「試験観察」という決定もあります。これは、少年に対する処分を直ちに決めることが困難な場合、当分の間、家庭裁判所調査官が助言や指導を与えながら少年の生活ぶりや行動を観察するものです。数か月後、試験観察の結果もふまえて、最終処分を決めるための審判が改めて開かれ、最終的な処分が言い渡されます。
保護処分(保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致・少年院送致)の場合は、「抗告」という不服申立てをすることができますので、裁判官から抗告について説明があります。
抗告の説明まで終わると、少年審判は終了となります。
裁判官による最終的な判断の内容


不処分
不処分とは、審判の結果、非行事実が認められない場合や、非行事実が認められても、特に保護処分に付すまでの必要はないと認められた場合に行われるもので、少年を保護処分に付さないことを宣言するもののことをいいます。
非行事実が認められないことを理由とする不処分は、成人の刑事裁判における無罪判決と同じイメージです。
不処分は、特段処分をしないことを意味しますので、審判でなされる裁判官の判断としては最も良い結果といえるでしょう。
保護処分
保護処分は、①保護観察、②児童自立支援施設・児童養護施設送致、③少年院送致の3つに分かれます。
①保護観察は自宅に戻ることができますが、②児童自立支援施設・児童養護施設送致や③少年院送致の2つについては、自宅に戻ることはできず、それぞれの施設で一定期間生活することになります。
保護観察
保護観察とは、少年を家庭や職場に置いたまま、保護観察官や保護司が少年に対して指導監督と補導援護を行い、少年の改善更生を図ることを言います。
分かりやすく言い換えると、少年院や施設などには入らず、ある一定期間、決められた約束を守りながら自宅や職場で日常生活を過ごすことをいいます。その期間中、保護観察官や保護司と呼ばれる人から、生活や交友関係などについての指導や支援を受けることになります。
主な約束としては、再び非行を行わないように健全な生活態度を守る、定期的に保護観察官・保護司の面接を受ける、定期的に生活状況を報告する、といったことがあります。非行に至った背景によっては、個別の約束が決められることもあります。
約束が守られない場合、保護観察官による調査が行われ、場合によっては少年院などに入らなければならないこともありますので、施設に入らなくてよかったと安心して気を抜いてしまうと、結果的に後で施設に入らなければならなくなることも考えられるので、気を引き締める必要があります。
児童自立支援施設・児童養護施設送致
児童自立支援施設や児童養護施設という児童福祉施設に少年を送って教育や養護を行うものです。
寮の中で数人が共同生活を営み、中学校の分校等に通学して勉強するなどして過ごします。中学生以下の少年が対象とされることが多く、家庭的な雰囲気となるように職員の方も工夫されています。
少年院送致
少年院送致とは、少年を少年院という特別の矯正教育施設に収容して、少年が健全なものの考え方や規則正しい生活習慣を身に付けることができるように指導するものをいいます。
決定が出てから2、3日で少年院に行かなければならなくなります。
少年院の種類、少年院での生活、少年院を出た後などについては、こちらのページをご覧ください。
保護処分に対する不服申立て
これら保護処分については、『抗告』という不服申立てができます。
抗告は、決定から2週間以内に、高等裁判所に申し立てる必要があります。
ただし、抗告には、執行を停止する効力はありません。そのため、少年審判で少年院送致の決定がされてしまうと、すぐに抗告をしたとしても、送致を止めることはできませんので、決定から数日(2、3日)で少年院に行ってしまうことになります。
検察官送致
死刑、拘禁刑に当たる罪の事件について、調査をした上、その事件の重大性や犯情、さらには、少年の犯罪的危険性、非行歴などから判断して、刑罰を科すのが相当と認められるときに、事件を検察官に送致するものです。また、殺人や傷害致死など故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件であって、犯行時に16歳以上の少年に係るものについては、原則として事件を検察官に送致することとされています。
送致を受けた検察官は、犯罪の嫌疑がある限り、原則として、起訴しなければならないとされています。
なお、18歳・19歳の「特定少年」については、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件で、その罪を犯したときに18歳以上であった場合にも、原則として検察官送致の対象となります。
試験観察
試験観察とは、家庭裁判所が直ちに保護処分を選択するかどうかの最終決定を行いにくい場合に、最終的な決定を留保したまま、少年の非行性や更生可能性を見定めるために、相当の期間、少年を家庭裁判所調査官の観察に付すという中間的な決定です。
試験観察になると、調査官が少年に対して更生のための助言や指導を行いながら、少年が自分の問題点を自覚し、改善していこうとしているかについて観察を続けます。試験観察の結果を踏まえて、改めて開かれる審判で最終的な処分を決めることになります。
試験観察中は自宅で暮らすことが多いですが(これを「在宅試験観察」といいます。)、少年の生活環境を変えるため適当な施設や個人などに少年の補導を委託したり(これを「補導委託」といいます。)することもあります。
少年審判は審判までの準備が重要です
少年審判が開かれる前に、裁判官は、事件記録や家庭裁判所調査官の調査結果、付添人から提出された意見書や資料など、事件に関するさまざまな資料を検討した上で審判に臨みます。
そのため、少年審判では、審判当日の対応だけでなく、それまでにどのような取組みを行い、その内容を家庭裁判所にどのように伝えてきたのかが重要です。
少年が事件と向き合う中でどのように考えが変化したのか、非行に至った原因についてどこまで考えられるようになったのか、その原因に対してどのような取組みを行ってきたのかを整理します。
付添人は、これらの事情や保護者による監督体制などを踏まえて意見をまとめ、審判前に意見書やその裏付けとなる資料を家庭裁判所へ提出します。
少年審判に向けた準備は、審判当日になってから始めるものではありません。
できるだけ早い段階から、少年の更生と少年審判での最終的な判断を見据えて準備を進めることが重要です。
少年審判に向けた準備は、できるだけ早く始めることが重要です。
審判までの取組みを家庭裁判所に適切に伝えられるよう、少年審判を見据えた付添人活動を行います。
少年事件でお困りの方は、できるだけ早い段階でご相談ください。
