少年事件が家庭裁判所へ送致されると、家庭裁判所調査官による調査が行われます。
家庭裁判所調査官は、心理学、教育学、社会学などの専門知識や技法を活用し、少年や保護者との面談、必要に応じた学校などへの照会、心理検査などを通じて、少年の性格や行動傾向、非行に至った背景、家庭や学校などの生活環境について調査する専門職です。
調査の結果は裁判官へ報告され、その後の少年審判や処分を判断する重要な資料となります。
調査官との面談で確認されること
家庭裁判所調査官との面談では、事件の内容だけでなく、少年の性格や家庭環境、学校生活、事件後の状況など、再非行を防ぐために必要な事情について幅広く確認されます。
例えば、次のような事項です。
・事件に至った経緯や少年本人の受け止め方
・家庭や学校での生活状況
・事件後の変化や現在の取組み
・今後の監督や生活の見通し
もっとも、実際にどのような点について詳しく確認されるのかは、事件の内容や少年の状況によって異なります。
また、通常、少年本人と保護者は、それぞれ別に調査官との面談を受けます。
そのため、少年本人が質問に答えられないときに保護者が補足したり、保護者の説明を少年本人が補ったりすることはできません。
面談の場で初めて考えるのではなく、事件に至った原因や事件後の変化、今後どのように再非行を防いでいくのかについて、少年本人と保護者がそれぞれ事前に考えを整理しておくことが重要です。
もっとも、調査官との面談に決まりきった「正解」があるわけではありません。
模範的な回答を覚えるのではなく、それぞれが自分の言葉で具体的に説明できるよう準備することが大切です。
保護者が面談で意識すること
家庭裁判所調査官は、保護者が受け答えを上手にできるかを見ているわけではありません。
家庭の状況をどの程度把握しているのか、少年が抱えている問題をどのように考えているのか、今後どのように監督し、支えていこうとしているのかなどを確認します。
そのため、事件前の少年の生活状況、事件後に少年と話し合った内容、現在家庭で始めている取組み、今後の監督方法などについて、自分の言葉で説明できるよう整理しておくことが重要です。
必要以上によく見せようとしたり、分からないことを推測で答えたり、実行が難しい約束をしたりすることは適切ではありません。
また、「今後は厳しく注意する」「家族でしっかり監督する」と述べるだけでは、具体的に何をするのかが調査官に伝わりません。
事件の原因や少年の状況に応じて、生活時間やスマートフォンの利用方法を見直す、交友関係を把握する、学校や勤務先と連携する、必要に応じて医療機関やカウンセリングにつなげるなど、現実に実行できる監督や支援の方法を考える必要があります。
面談までにすべてを整える必要はありませんが、実行可能な取組みについては、できる範囲で始めておくことが望ましいでしょう。
大切なのは、形式的に対策を並べることではなく、事件に至った原因を踏まえ、その少年と家庭に合った再非行防止策を考えることです。
調査官の報告書と処遇意見
家庭裁判所調査官は、調査の結果を報告書にまとめるとともに、少年にどのような処分や働きかけが必要であると考えるかという「処遇意見」を裁判官に示します。
最終的な判断を行うのは裁判官であり、裁判官が調査官の処遇意見に法的に拘束されるわけではありませんが、調査官の報告書と処遇意見は、少年審判を開くかどうかや、少年に対する最終的な処分を判断するうえで極めて重要な資料となります。
調査官の立場
家庭裁判所調査官は、調査の過程で少年に反省を促したり、少年や保護者に再非行防止に向けた助言や指導を行ったりすることがあります。
しかし、調査官は、付添人である弁護士のように、少年側の立場から少年の利益を守る役割を担っているわけではありません。
調査官は、裁判官が適切な判断を行うために必要な事情を調査し、その結果や処遇意見を裁判官へ報告する立場にあります。
そのため、少年や保護者が面談で話した内容も、調査結果のとして裁判官に報告されます。
不利な事情を隠したり、事実と異なる説明をしたりすることは適切ではありませんが、事件についてどのように受け止めているのか、現在どのような課題があるのか、事件後にどのような取組みをしているのかを、正確に伝えることが重要です。
面談の雰囲気と処遇意見
家庭裁判所調査官との面談は、少年や保護者が話しやすいよう、穏やかな雰囲気で進められることもあります。
しかし、面談中に厳しい指摘をされなかったことや、調査官が親身に話を聞いてくれたことが、少年にとって有利な処遇意見につながるとは限りません。
調査官は、面談での受け答えだけでなく、事件記録、学校や関係機関から得た情報、家庭環境、事件後の生活状況や再非行防止に向けた取組みなどを総合的に検討して処遇意見をまとめます。
そのため、面談の雰囲気から調査官の意見を推測するのではなく、少年や家庭の状況、事件後の変化、今後の監督体制を正確に伝えることが重要です。
調査官面談に向けた弁護士の対応
家庭裁判所調査官との面談は、その後の少年審判や処分を考えるうえで非常に重要な機会です。
そのため、当事務所では、少年本人と保護者が十分に準備したうえで調査官との面談に臨めるようサポートしています。
① 面談前の事情整理と更生に向けた取組み
弁護士は、調査官との面談に先立ち、少年本人や保護者から事情を伺い、事件に至った背景や現在の課題を整理します。
そのうえで、家庭内のルールや監督方法の見直し、学校や勤務先との連携、医療機関やカウンセリングの利用など、少年の更生や再非行防止に向けて必要な取組みを検討し、可能なものから実行できるようサポートします。
被害者がいる事件では、被害者の意向に配慮しながら、謝罪や被害弁償についても対応します。
② 調査官との面談に向けた打合せ
当事務所では、調査官との面談前に、少年本人や保護者と対面または電話で入念に打合せを行います。
事件の内容や少年・家庭の状況を踏まえ、調査官から質問される可能性のある事項をあらかじめお伝えし、事件についてどのように受け止めているのか、事件後にどのような取組みをしているのか、今後どのように生活していくのかなどについて考えを整理します。
少年本人と保護者は別々に面談を受けるため、面談中にお互いが補足することはできません。
そのため、それぞれが自分の言葉で説明できるよう事前に準備し、落ち着いて面談に臨めるようサポートします。
③ 調査官との面談・裁判所への意見提出
当事務所では、弁護士から調査官に面談を申し入れ、複数回にわたって家庭裁判所調査官との面談を行います。
弁護士から、少年や家庭の事情、事件後の変化、更生に向けた取組みなどを伝えるだけでなく、調査官が事件や少年本人、保護者などについて、どのような点を問題として捉えているのかについても意見を交わします。
そのうえで、調査官の問題意識も踏まえながら、少年の更生に向けてどのような取組みが適切かを検討し、少年本人や保護者とも今後の対応を考えていきます。
また、必要に応じて、裁判官に対して意見書や関係資料を提出し、少年本人や保護者からの説明だけでは十分に伝わりにくい事情についても具体的に伝えます。
このような調査官とのやり取りを重ねながら、その後の少年審判も見据え、少年にとって適切かつ有効な更生に向けた取組みを進めていきます。
家庭裁判所調査官との面談前にご相談ください。
家庭裁判所調査官との面談は、その後の少年審判にも影響し得る重要な手続です。
面談を受ける前に、今後の見通しや必要な準備について一度ご相談ください。
